ローカルSDGs アクションフォーラム

参加団体の活動紹介

ネパールで「医療が届く仕組み」
コミュニティ×テクノロジーの力

認定NPO法人 ASHA

団体紹介

ASHAは、「コミュニティ×テクノロジー」の力で「医療が届く仕組み」をつくるNPO法人です。 ネパールの医療資源が不足する地域を中心に、現地の人々が主体の持続的に運営できる保健・医療の仕組みを構築することを目指しています。日本側は「さまざまなバックグラウンドの人の力を掛け合わせて新しい社会を作るプラットフォーム」を目指し、医療職やビジネス・エンジニアなど多様な本業を持つ「プロボノメンバー」が主導して取り組んでいます。

認定NPO法人 ASHA
HP https://www.asha-np.org/

該当SDGs 目標番号

インタビュー

代表理事 任 喜史さん

代表理事 任 喜史さん
任さん、写真左、右は共同代表のサッキャさん

ネパール大地震からの決意

任さんは大学在学中に、アメリカ留学やアフリカのへき地訪問などを経験し「国際保健」の分野に関心を持つようになりました。卒業後は公衆衛生大学院に進学、進学直後に起きた2015年ネパール大地震の直前に現在の共同代表・サッキャさんと出会い、友人たちと前身の任意団体を設立しました。大学院修了後は外資系コンサルティングファームに就職し、勤務するかたわらASHAの活動も続けました。2023年に退職し、現在は自身のコンサルティング会社の経営や大企業の海外事業担当、大学の研究員を兼任しながら活動を続けています。

ASHA共同代表でネパール出身の医師・サッキャさんとは、大学院の同級生です。任さんは学部時代の卒業論文がネパールに関する内容で、入学直後から意気投合したそうです。知り合った翌日にネパール大地震が発生し、国際保健への関心と「自分も役に立ちたい」という思いで、サッキャさんと共に現地で出張診療に参加しました。

しかし、達成感はあったものの、医療アクセスの不足が根本課題であり、一時的ではなく持続的な仕組みが不可欠だと痛感し、日本からでも取り組める仕組みづくりに挑戦することを決意しました。任さんたちが所属していた大学院の副専攻から、学際的な活動に支援を受けられることになり、ASHAの活動が本格的に始まりました。

ネパール大地震からの決意

地域医療の仕組みづくり

生まれた場所や住む地域によらず、誰もが安心して健康に暮らせる社会を目指す活動に向け、最も必要だと考えているのが「医療へのアクセス」です。必要な医療に必要なタイミングでアクセスできることを意味しており、「必要な医療が自力でたどりつけるところにあること」と「必要なタイミングを理解し、自分で医療を受けに行けること」の両方が大切だと考えています。また、協力団体が去っても仕組みとして現地に根付くために、現地の人たちと「協創」していくことも非常に重要だと感じています。

そのため、医療資源が不足している地域で「コミュニティ」と「テクノロジー」を活用した医療が提供される仕組みづくりと、病気やけがに関する住民の基礎的な知識を高める健康教育の構築に現地の人たちと取り組んでいます。現在、ネパールで主に3つの活動を行っています。

1つ目は、地域医療の仕組みづくりです。ネパールの地域で活動する「地域保健スタッフ」を育成し、独自に開発した問診アプリ「ASHAConnect」を活用しています。妊婦・子ども・生活習慣病患者の家庭を定期的に訪問し、健康チェックや必要時の受診支援、健康教育を行っています。これまで医療機関では紙カルテを患者に渡すのが主流で、医療情報が蓄積されにくい課題がありました。そこで、電子カルテ「Nepal EHR」を医療機関に導入し、ASHAConnectとともに、地域医療としての情報管理の環境整備を進めています。

2つ目は、新生児の救命に関する取り組みです。ネパールでは依然として新生児死亡率が高い状況が続いています。一般に生まれた直後に約10人に1人の割合で呼吸ができない新生児が発生しますが、適切な対応を行えば約9割が救えるとされています。ASHAでは、新生児蘇生法の現地に合わせた標準的な治療法の確立と、確実に現場で実施できる実技研修の開発・展開を、日本の新生児蘇生法「NCPR」の専門家の指導・全面協力のもと、ネパール小児科学会との共同事業として行っています。

3つ目は、地域の健康教育です。地域の中学校で、中学生を対象とした応急処置などの実技を含む研修を実施しています。また、学校の先生が自ら健康教育を行えるようになるための研修も行い、地域全体の健康リテラシー向上を支援しています。

地域医療の仕組みづくり

現地への移管に向けて

2024年には健康教育事業を現地自治体へ引き継ぎ、地域保健スタッフの活動も広く認知され、地域の健康を支える存在として定着しつつあります。実績が評価され、2026年度からは現地NGOに加えて自治体も参画する共同事業化が始まる予定で、将来的な自治体への全面移管も視野に入れています。

これは、現地での自走を目指すASHAにとって大きな成果です。一方で、事業の拡大・発展に向けては、リモート中心のため課題発生時の打開策が限られること、日本側の財源が助成金に偏り中長期的な計画を立てにくいことが課題です。

10年間、色んなことがありましたが、日本側もネパール側メンバーも、一緒にごはんを食べたりお酒を飲んだりしながら、プロジェクトの未来を話しているときのことはどれも鮮明に覚えているといいます。同じ時に、同じものを、同じ場所で見ることで、一緒に未来を作っていくことは、これまでも、これからも任さんは大切にしたいと思っています。

法人化して数年たったときに、メンバーがライフステージの変化でほとんどいなくなり、続けるかかなり迷ったときもあったそうです。

今後の展望の1つは、これまで培ってきたことをより広く還元していくこと。ネパールで培った仕組みを生かし、高齢化が進む秋田において、学生と高齢者が定期的に交流し、健康サポートも行う事業を始めています。また、さまざまな専門のメンバーとこれまでには思いつかなかったことを一緒に作って取り組めるプラットフォームにしていきたいといいます。

現地への移管に向けて

任さんからメッセージ

私たちは、国際協力は、答えがない世界の中で、相互が学び合い、よりよい社会を作っていくプロセスだと思っています。その取り組み方も1つではなく、私たちは様々な人と活動を進めるため、あえてプロボノを主体とした運営を行っています。もし、共感・関心を持っていただけた方は、仲間に加わっていただけると嬉しいです。また、メンバーとしてはもちろんですが、すぐに活動できない方も、マンスリーサポーターなどの形で参加・応援していただけますと幸いです。

取材を終えて:公認サポーター 市川潤子

任さんをひと言で表現すると「直感が鋭い人」だと思いました。理由は、タイミングをうまくつかんでいるからです。人との有機的なつながりを大切にしていますし、何よりも直感を大切にしている。医師であり、共同代表のサッキャさんとの出会いは特にそう感じました。縁と運の重なり合いは、本当に面白いですね。
<組織概要>
団体名:認定NPO法人 ASHA
所在地:〒105-0013 東京都港区浜松町2丁目2番15号 浜松町ダイヤビル2F
設立:2015年10月
事業内容:ネパールにおける医療環境整備・ヘルスリテラシー向上支援
URL: https://www.asha-np.org/