特定非営利活動法人Piece of Syria
団体紹介
Piece of Syriaは、「シリアをまた行きたい国にする」ことを目指して活動する日本発のNPO団体です。戦争や地震で教育を受けられない子どもたちに学びの機会を届け、幼稚園や補習校の運営、学校の修復、教師・保護者向けの研修を行っています。日本では、シリアの魅力や文化を伝える講演や学校での授業、写真展、オンラインイベントを通じて、平和について考えるきっかけを広げています。その取り組みはForbes JAPANを始めとしてネット・新聞・テレビ・ラジオで紹介され、Newsweek日本版「世界が尊敬する日本人100」に中野貴行代表が選ばれています。

HP http://piece-of-syria.org
該当SDGs 目標番号
インタビュー
代表理事 中野貴行さん

小学生時代の実行力
中野さんは小学生の頃にアフリカの飢餓を伝える記事を読んで国際協力を志しました。大学時代にはバックパッカーとして中東を訪れ、卒業直前にはフィリピン支援のNGOの活動に参加しました。2008年から青年海外協力隊としてシリアで活動。協力隊として活動していた村で「子どもたちの夢を叶える学校を作りたい」と話す少女がいました。「あなたが夢を応援してくれたから希望を持てた」と笑い、医師を目指して勉強に励んでいました。
任期を終え、2010年に日本に帰国してから1年後、シリアで内戦が勃発し、国際社会の思惑の中で複雑化・長期化していきました。そして少女の住んでいた村はイスラム国(ISIL)に占拠され、学校の校庭が処刑場になったことを知りました。「何かできることはないか」と考え、半年かけて中東や欧州を巡り、難民となったシリアの人々や支援団体の方100人以上から話を聞きました。多くの人が「子どもたちは未来だ。教育を支えてほしい」と語っていました。その言葉に背中を押され、少女の夢の続きを実現し、平和になったシリアを訪れ「あなたのおかげで夢が持てたよ」と彼女に伝えるために、中野さんはPiece of Syriaを設立しました。

戦前は観光客が世界30位
「シリア=危険な国・難民」と思われがちですが、戦前のシリアは平和で治安が良く、文化遺産と人々の温かいおもてなしで観光客ランキング世界30位(worldbank.orgによる)の、美しく誇り高い国でした。医療・教育も無料で、就学率は99.6%で教育水準の高さは有名でした。しかし、戦争の影響で多くの学校が失われ、就学率は低下し、子どもたちの未来が奪われています。中野さんたちは、教育を通じて子どもたちが再び自らの力で復興を担えるよう支援し、人々が「また行きたい」と思える平和で魅力あるシリアを取り戻すことを目指しています。
シリアで、戦争や地震の影響で学ぶ機会を失った子どもたちのために、幼稚園を運営しています。基礎教育に加え、アクティビティを通じた心理と社会的ケアを行い、子どもたちの心の回復と成長を支えています。また、現地教師の研修や日本の幼児教育の実践を共有し、教育の質の向上にも力を入れています。トルコでは難民の子どもたちの補習校を支援し、学びの継続を後押ししています。さらに日本国内では、写真展や講演会、シリアの観光地を訪問するオンラインツアーやシリア文化を学ぶ教養ゼミを通じて、シリアの魅力や文化、そして平和の尊さを伝える活動を続けています。

支援不足と日本の継続的な寄付
シリアでは小学校の退学率が55%と高い一方で、幼稚園を卒園した子どもたちの退学率は一割以下に抑えられ、多くが優秀な成績で表彰されています。保護者の間にも教育の大切さが浸透し、家庭や地域で子どもたちを支える意識が広がったことが大きな成果です。中野さんたちはこれまでに、現地のニーズに応じて5万人を超える子どもたちに教育の機会を届けてきました。2024年末の政権崩壊したことで改善の兆しも見えますが、治安や経済の不安定さが続き、人口の7割以上に支援が必要とされる中、メディアの注目の低下もあり、世界からの支援不足が今後の大きな課題です。
2023年のシリアでの大地震の際、子どもたちが「幼稚園に行こう! あそこは安全だよ」と口にしたことが強く心に残っています。幼稚園が、子どもたちにとって安心できる居場所であり、希望を感じられる場所になっていることを実感しました。また、日本でもPiece of Syriaを通じてシリアを知り、継続的に寄付やボランティアとして関わる人が「本気でシリアに遊びに行きたいから応援しています」と言ってくれることが増えているのが印象的です。
アサド政権の崩壊を受け、シリアでは避難先からの帰還が進んでいます。その中で、他国で生まれ育ったために母国語の読み書きができない子どもたちに対して、アラビア語や文化、歴史を学ぶ機会を提供し、学校に戻るための支援を強化していきます。失われつつある文化や人々の営みを記録するアーカイブづくりにも取り組み、有形・無形の文化財を未来に残し、教育の教材として活用していく予定です。この取り組みを、日本ではVRや360度映像を通じて発信し、シリアの「今」と「希望」をリアルに伝えていきます。

中野さんからメッセージ
2025年4月、私は15年ぶりにシリアを訪れることができました。破壊の跡の中にも人々の優しさや笑顔があり、そして美しいシリアの遺跡に改めて感動し「一人でも多くの人に、シリアに遊びに来てほしい」と心から思いました。私たちは、シリアの課題ではなく、その魅力や回復していく姿を伝えることを大切にしています。ニュースだけでは見えない希望の光を知ってほしい。そして、シリアや中東を「遠い場所の話」ではなく、関心を寄せる身近な地域として感じていただけたらうれしいです。いつか「行ってみたい」と思える日が、平和への第一歩になると信じています。
取材を終えて:公認サポーター 市川潤子
行動力ある中野さんが、どのような幼少期だったのか興味があり質問しました。すると「友達いない、根暗、目立たない、そんな子でしたよ」と明るく言うと、続けてこう話してくれました。「親は自分がする事に、何でも背中を押してくれた人でした」。この一言は、ゆっくりと大切に言っているのが印象的だったのです。危険を伴い、命がけで活動をされる事もある中野さんですが、親御さんの揺るぎない愛情を注ぎ続けてくれる安全地帯があるからこそ、挑み続けご活躍されているのだろうなと思いました。「人は自分が満たされていないと、感謝を求める。食事、水、世界トップレベルでそういう幸せが届いているということに、日本人は気づいてほしい」。ケニアからの取材、ありがとうございました!深い一言に、改めて感謝します。今回も時間が足りないと思うほどの情報量でした。
<組織概要>
| 団体名: | 特定非営利活動法人Piece of Syria |
| 所在地: | 〒558-0033 大阪府大阪市住吉区清水丘1-15-23 |
| 設立: | 2016年5月(法人設立 2021年7月) |
| 事業内容: |
シリア・トルコでのシリアの子どもたちへの教育支援活動。 日本で、シリアの魅力や現状の課題について伝えることを通じた平和教育活動。
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| URL: | http://piece-of-syria.org |