ローカルSDGs アクションフォーラム

参加団体の活動紹介

僧侶が待つオンライン「駆け込み寺」
苦しいときに応える300人

hasunoha

団体紹介

hasunoha(ハスノハ)は2012年、光琳寺の井上広法住職とITディレクターの堀下剛司氏が設立した、仏教僧侶によるオンライン相談のプラットフォームです。「悩みを抱えるすべての人に、安心して心の内を打ち明けられる場所」として、誰でも匿名・無料で利用できる僧侶によるオンラインの相談窓口です。利用者はニックネームとメールアドレスだけで質問が投稿できます。日々の悩みや迷い・不安に、全国の僧侶が答えています。現在、浄土宗・曹洞宗・真言宗など、宗派を越えた全国各地の僧侶約300名がボランティアで参加しています。宗派の垣根を越えて、宗教的な価値観や人生観を持つ方々が協力し合っているのが特徴です。

Hasunohaが大切にしているのが、専門用語を極力使わず、分かりやすく、優しい言葉で答えること。寄せられた質問には複数の僧侶が回答することもあり、利用者は一つの問いに対して多様な視点や考え方に触れることができます。例えば「死にたい」という緊急性の高い相談には、医療機関や行政の相談窓口を案内しながら、運営側が個別にフォローしています。個人情報の保護を基本に安心して利用できる環境づくりを心がけているといいます。

累計の相談件数は7万件を超え、利用者アンケートによる回答満足度は約9割。NHKや朝日新聞、テレビ朝日「ぶっちゃけ寺」など、多くのメディアでも取り上げられました。

hasunoha
HP http://hasunoha.jp/

該当SDGs 目標番号

インタビュー

共同代表 井上広法さん

共同代表 井上広法さん

匿名・無料でつながるセーフティネット

1979年宇都宮市生まれ。浄土宗光琳寺住職。佛教大学で浄土学、東京学芸大学で臨床心理学を学び、仏教と心理学の両面から心のケアに取り組んでいます。引きこもり経験を機に探究を深め、2012年に仏教Q&Aサイト「hasunoha」を開設。著書「しあわせに満たされる練習」を上梓。JTなどで企業研修を担当しました。宿坊「自在堂」やコワーキングスペース「áret」運営を通じ、地域と世界を結ぶ活動を続けています。

東日本大震災の混乱の中で耳にしたのは、家族や住まいを失った悲嘆そのものよりも「この先どう生きればよいのか分からない」という漠然とした不安や孤独でした。安心して胸の内を打ち明けられる場の少なさを痛感し「仏教の寄り添う力で何かできないか」と考え、友人の堀下剛司氏とともに2012年に仏教Q&Aサイト〈hasunoha〉を設立しました。インターネット上の「駆け込み寺」を目指したのです。

その必要性を改めて突きつけたのが、2017年に座間市で起きたSNSを使って知り合った人が被害者となった連続殺人事件でした。「死にたい」とつぶやいた若者たちは、本当は生きたかったが、生き方が分からず、声を出す場所すらなかったのではないか。生きづらさを抱えた人に「あなたは独りではない」と伝える居場所を広げたいという思いが、hasunohaの原動力だそうです。

井上さんたちは僧侶300人の力を結集し、「苦しいときは、お坊さんと一休み」という温かなつながりを社会に提示し続けていきます。

気付きと安心を

hasunohaが向き合う社会課題は「孤独・孤立により相談相手を持てず追い込まれる人の増加」「経済・地理・文化的背景によって生まれる『心の支援格差』」「死にたいほどの苦悩を抱えながら適切な専門機関へつながれない情報断絶」です。オンライン駆け込み寺を提供することで、SDG 3「すべての人に健康と福祉を」とSDG 10「人や国の不平等をなくそう」に貢献し、誰一人取り残さない心のセーフティネットを築くことを目指しています。

活動の成果は「匿名・無料・宗派横断」という仕組みによって、多くの人が気軽に相談できる場を実現できたことです。全国のお坊さん約300名のネットワークが構築され、平均24時間以内に回答が届く体制も確立しました。これはボランティアで支えている僧侶の尽力によるものだそうです。緊急性の高い相談には、医療機関や行政と連携し、早期の介入ができた事例が複数あったといいます。オンライン相談の枠を越えて、命をつなぐ支援につながったという点で、非常に意義深かったと思っているとのことでした。

メディアにも多く取り上げられ、「仏教の社会的な役割」に光が当たるきっかけにもなり、社会の中で寺や僧侶ができることを、改めて考える機会になったといいます。

最も大きな課題は、運営の持続可能性です。現状はボランティア主体で動いていますが、安定的な活動を続けるには、寄付や助成金、法人協賛などの資金基盤の整備が急務です。

僧侶の方々が適切に対応できるよう、傾聴技術や危機介入のための研修体制の強化・体系化も必要になってきています。僧侶の「優しさ」だけに頼らない、支援の質を守る仕組みが必要です。今後は、多言語対応やアクセシビリティの向上も視野に入れています。海外在住の日本人や、視覚障がいのある方にも使いやすいサービスにしていきたいと考えています。高リスク相談に迅速に対応するための専門機関へのプロトコル整備も重要です。

井上さんはオンラインで得られたつながりを、地域の寺や対面の支援へと橋渡しすることが、次のステップだと考えています。心のケアが一過性のもので終わらず、継続的なコミュニティにつながっていくような仕組みづくりを目指しています。

新たな選択肢の裏側

印象的だったのは、ネット上の小さな駆け込み寺がテレビや新聞に取り上げられ、僧侶の存在感が一気に可視化された瞬間です。例えばテレビ朝日の「ぶっちゃけ寺」やNHKの特集で紹介された直後、深夜にもかかわらず「今すぐ相談したい」というアクセスが急増し、「いつでも寄り添ってくれる場所があると知って涙が出た」とのメッセージが届きました。メディアを通じて「相談はお寺でもできる」という選択肢を社会に示せたことは、hasunohaの意義を実感した出来事だったそうです。

今後は、オンライン相談を基盤にしながら、全国の寺院と連携し、対面カウンセリングや地域イベントへ橋渡しする仕組みを整えたいと考えています。僧侶向けに傾聴・IT活用研修やファンドレイジング支援を行い、活動の幅を寺務から教育・福祉・企業研修まで広げてくといいます。hasunohaを窓口に、寺院が地域の安心インフラとなり、僧侶がより自在に社会課題へ貢献できる生態系を目指したいそうです。

新たな選択肢の裏側

井上さんからメッセージ

生きづらさや迷いは、誰の心にもそっと忍び込みます。そんなときはどうか一人で抱え込まず、hasunoha を思い出してください。匿名・無料で、全国のお坊さんがあなたの声に耳を傾けます。「ちょっと話したい」「少し休みたい」——-その気持ちだけで十分です。

本取り組みを支えてくださるご寄付や寺院・僧侶の参加も大歓迎です。ともに「やさしい居場所」を広げ、誰もが安心して生きられる社会を育てていきましょう。

取材を終えて:公認サポーター 市川潤子

井上さんは柔らかな声のトーンで、取材の最後にこうお話ししました。「社会を優しくしたいですね。人がもっと思いやり、慈しみの心をもって共に生きられたら良いですね」。今、あなたの身近な人々はどのような生き方をしているでしょうか。私も自問自答する機会をいただけました。

ゴール16の「平和と公正をすべての人に」は、井上さんのようにあなたのお悩みを聴いてくださる存在あってこそなのかもしれません。
<組織概要>
団体名:hasunoha
所在地:非公開
設立:2012年11月
事業内容: 僧侶によるオンラインでの人生相談
URL: http://hasunoha.jp/