ローカルSDGs アクションフォーラム

参加団体の活動紹介

「旅行弱者」を応援するホテル
世界に届け、思いやりの行動

株式会社ホテル松本楼

団体紹介

ホテル松本楼グループは現在、3世代旅行に適した「ホテル松本楼」と、1人旅やカップルなど大人が料理と温泉を楽しめる「洋風旅館ぴのん」、飼い犬と一緒に泊まれる「Doggyスイート ペロ」の3軒の宿を経営しています。また伊香保活性化のために、コロナ禍のもとで石段街に「伊香保ベーカリー&スイート」をオープンさせました。グループを通じて「伝わりますかやさしさ 感じますかふれあい」を合言葉に、社員教育にも力を入れています。

2023年1月には、ヨルダン・モーリシャス・トンガなどの世界16カ国の観光に携わる行政の担当者18人が、研修に訪れました。女将の松本由起さんがフードロス削減や、SDGsの取り組み、「旅行弱者」へのサポートを説明しました。

株式会社ホテル松本楼
HP https://www.matsumotoro.com/

該当SDGs 目標番号

インタビュー

女将 松本由起さん

株式会社ホテル松本楼 女将 松本由起さん

寄り添うサービス

大学卒業後、英国ホテルにて2年半修業を積み、個人を大切にする取り組みに感動したそうです。帰国した当時は「女性の1人旅は、自殺してしまうから予約を取ってはいけない」と言われていた中で、1人旅を応援する洋風旅館を開業されました。本館の松本楼では、宴会場を改装して、貸し切り風呂を作るなど、身体の動きに制限がある方や高齢者に寄り添うサービスを、1990年代から始めました。1991年に車いす用トイレを設置したときから、身体障がい者施設の利用が増えました。

当時、大浴場で粗相してしまった施設の方を見て、「身障者を泊めるな!」と別の客から言われたのをきっかけに、旅行弱者に寄り添う旅館を目指して、特別な食事やサービスに取り組んでいます。先代女将の和子さんが、怒ったお客様に何度も何度も頭を下げて謝ったそうですが、それでも怒りが収まらなかった客が、ついには障がい者の宿泊が悪いかのよう言葉を口にしたため、和子さんはたまりかねてこう言ったそうです。「お客さんが別の旅館へ行ってもらえませんか。この方たちは、うちにしか来られないのですよ」。当時は、車いす用の設備を整えて積極的に受け入れている宿は少なかった中での発言で、娘でもある由起さんは、先代女将の意志を受け継いでいます。

緊急事態宣言後の伊香保温泉ゴミ拾い大作戦
緊急事態宣言後の伊香保温泉ゴミ拾い大作戦

旅館でエコアクション

旅行弱者とは、身体障がい者だけでなく、子ども連れ、アレルギーがある人など、多岐に渡ります。シングルマザーや乳がん患者など、旅行に行きたくても行けない人もたくさんいます。これら困り事を松本さんは聞き、それぞれに寄り添ったサービスの開発をしてきました。

例えば、刻み食、ミキサー食、離乳食、ヴィーガン食の提供、テーブルごと子どものプレイルームが付いた食事場所、乳がん患者や身体障がい者への貸し切り風呂無料サービス。視覚障がい者へのクロックポジションでの料理提供、車いすや哺乳瓶洗浄グッズなどの貸し出し。シングルマザーの親子招待会などは毎年実施されています。

2004年に子育て中の板前が「4段階の離乳食」を提案してくれたのをきっかけに、「生後6ヶ月~1歳半の赤ちゃんの離乳食」「年少さんランチ」「お子様ランチ(幼児用と小学生用)」がメニューに加わりました。おかゆのかたさは水分量別に4段階に細かく分けています。

また、コロナ禍での取り組みとして、群馬県内で一斉休校が決まった際には、宴会場を学童保育に設えました。午前9時から午後5時まで、板前が作った弁当と入浴付きで1,000円で募集したところ、子どもを持つスタッフや近所のお母さんたちから喜ばれたといいます。更には、休館を余儀なくされた時期に、社長と女将がスタッフ全員を集めて「お給料は100%保証するので、この大切な時間を有効に使い、旅館を磨き、自分を磨きましょう」と週5日午前9時から午後18時までの研修を開始したそうです。その名も「松本楼学校」。最も早く取り組んだのは、SDGs宣言書の作成でした。スタッフ全員のあるべき姿を共有し合い、テーマ別に5チームに分かれ、同時に旅館業で初の「エコアクション21」の取得も目指しました。食品ロス削減チームは、お子様ランチを完食した子どもにプレゼントを用意したり、使い切れなかった野菜をスムージーにして朝食に出したりするアイディアや、料理の量を半分にした「ハーフポーション」の提供も考えたそうです。

年末に行う歳末たすけあい募金
年末に行う歳末たすけあい募金

心のバリアフリーで人材育成

「お客様との認識のズレが起こらないように、バリアフリーやお子様に優しい宿をホームページ上でも全面的にアピールしたことが良かった」。こう松本さんは言います。これらのサービスを行うためには、客からの聞き取りや、打ち合わせが必要になり、思いやりのある社員の育成も同時にしなければなりません。そこが課題とのことでした。

バリアフリーは段差だけでなく、従業員の心のバリアフリーがいちばん大事だと言います。30年以上前から取り組んでいることですが、最近、朝日新聞の「天声人語」や観光庁の動画、TBSの情報番組で紹介されたことで、その重要性が認識されたと感じていました。具体的には人材育成の一環として、新入社員たちへの心のバリアフリー研修に注力していました。「車いすの正しい操作方法」や「クロックポジションの料理提供」「手話の挨拶や筆記法」「妊婦さんや外国人への配慮のしかた」を必ず最初の研修で行っているそうです。観光庁からは2021年「心のバリアフリー認定」の宿泊施設、第1期全国48軒に選ばれています。

ホテル松本楼は、伊香保温泉をにぎやかにするために、チョコレートショップをオープンする予定です。毎年入社する新入社員などの若い人材が、夢と希望を持てるために、常に新しいチャレンジを行うようにしています。たくさんの経験を積んだ若手社員を、他の旅館の手伝いができる人に育て、旅館業界全体を活性化したいと思っているそうです。

松本さんからメッセージ

万葉の時代から湧き出る「黄金の湯」と平成になって発見された「白銀の湯」の2種の温泉と戦国時代に武田勝頼によって作られた石段街がシンボルの伊香保温泉です。当館はまだ創業60年ですが、旅館に業態変更する前は、洋食店でした。そのルーツを生かしながら、伊香保温泉に今までにない施設を目指して経営してきました。今回すてきなご縁により記事を載せていただきました。お読みいただき、ありがとうございます。是非一度伊香保温泉にお出かけいただけましたら光栄です。

シングルマザー親子のご招待会・ビンゴゲーム大会の様子
シングルマザー親子のご招待会・ビンゴゲーム大会の様子

取材を終えて:公認サポーター 市川潤子

ホテル松本楼さんがある群馬県渋川市は2021年4月に「もったいないの心を持って食品ロスの削減を推進する条例」を施行していました。温泉地がある自治体では、ゴミの排出量が県平均を上回っているそうです。そこで、市民と事業者が協力し「食品ロス削減推進協議会」も発足したので松本さんも参加したと語られていました。食品廃棄物を堆肥化し、農家に提供してトマト栽培に使っていただき、それをホテルで使う構想を持っているとのことでした。

温泉地での新しい循環、とてもすばらしい取り組みだと思いました。即行動される姿勢も、「社員をまずは幸せにするのが女将の役目」と人材育成で行っている幸せの循環も、最終的にはホテルを訪れるお客さんに還元されるのですね。ゴール17の「パートナーシップで目標を達成しよう」はホテル松本楼がSDGsの取り組みをしつつ、ゴールを目指しています。実はこのホテルに昔、客としてお世話になりました。不思議なご縁があり、今回取材させて頂いただき、改めてこのホテルが好きになったのは言うまでもありません。
<組織概要>
団体名:株式会社ホテル松本楼
所在地:〒377-0102 群馬県渋川市伊香保町伊香保164
設立:1964年11月
事業内容: 旅館業
URL: https://www.matsumotoro.com/