特定非営利活動法人 日本ペルー共生協会
団体紹介
任意団体として1999年に設立、ペルー人移民第1世代と日本人が協同し、東京都町田市で活動を始めました。2006年に東京都のNPO法人の認可を受け、2008年頃から神奈川県大和市でも活動を開始。2017年に神奈川県のNPO法人ともなり、日本ペルー共生協会神奈川を設立しました。
主にペルー人を中心とする日本在住のスペイン語圏の方を支援しています。立ち上げ当初は、出稼ぎで来日した家族の支援が主な活動でしたが、現在は学習や進学の支援、継承教育など、次世代の育成に向けた活動が中心になりました。

HP https://ajape.org/jp/
該当SDGs 目標番号
インタビュー
代表理事 小波津ホセさん

社会への適応促進
小波津さんは、ペルー人日本移民の第2世代です。1993年に初来日し、専門学校卒業まで日本で生活しました。その後、ペルーに6年間帰国し、2011年3月末頃に再来日し、大学に3年次編入し博士課程まで修了しました。米国に本社がある青果物輸入商社の日本支店の営業部長であると同時に大学で非常勤講師としても勤めており、2021年度から特定非営利活動法人日本ペルー共生協会2団体の代表理事です。2020年に日本人と結婚し、2児の父親でもあります。
小波津さんが協会の取り組みに関わった契機は3点。まずは「当事者性の問題意識」。移民第2世代として成長しましたが、現在でも解決されない社会問題があるそうです。次に「日本および本国社会との懸け橋機能を果たすため」との思いです。日本社会への適応促進、ペルー社会との関係性を維持する必要があると感じているそうです。最後に「先代に対する敬意と次世代継承」です。移民として日本で生活できる背景には移民第1世代の犠牲もあり、先人の強い意思を次世代へと継承する必要があると考えています。

潜在能力で格差改善
SDGsの17の目標では、「4質の高い教育をみんなに」「1貧困をなくそう」「5ジェンダー平等を実現しよう」に取り組んでいます。教育に関しては、教育機会の確保、高校や高等教育への進学、継承語教育の普及や文化継承などを中心に実施しています。貧困とジェンダー平等は、特に若者世代が日本社会で活躍できるための人の育成を念頭に置いています。かれらがバイリンガルなどの潜在能力を発揮し、社会格差を改善できる活動を試みています。また、被支援者から支援者への立場性を変遷させることで、被支援者をエンパワーメントする意図もあります。
教育に関する取り組みでは、2000年頃から実施している学習支援教室があります。日本語支援、学校の宿題支援、高校・高等教育進学を継続的に実施しています。継承語教室は形態または目的を変遷させながら2002年頃から開始しました。継承語教室の枠組みで不定期に文化継承(民族舞踊指導など)も踏まえ言語継承を実施しています。貧困とジェンダー平等では、若者世代を協会の活動に有償無償の形態で関わってもらい、活動への参加で自主性、協調性、指導能力などを経て社会参入できることを目指します。
成功した点は、日本語能力の獲得、高校・高等教育への進学に一定の成果を収めていること。これにより多くの移民第2世代は、移民第1世代と異なる社会参入を果たし、日本社会で活躍しています。一方、継承語の取り組みではバイリンガル人材として成長した移民第2世代の存在が後続世代の模範になるだけではなく、継承語の場がコミュニティ形成に寄与する一定の成果を生み出してきました。
問題点は、協会内の世代交代の時期に直面しているが、日本社会で活躍する移民第2世代が活動に関わることが困難で運営が不安定となっていることです。

世代交代し基盤強化
協会は、2029年に創立30周年を迎えます。無事に30周年を迎えることが短期的な目標であり、その準備を進めています。また、世代交代に直面しても組織運営の基盤強化や持続性を進めることが長期的な目標の1つでもあります。
一方で、現在まで移民として無事に日本社会に参入するために、何をすべきか・何ができるのかを模索してきました。しかし、今後は定年を迎えた移民第1世代が抱える問題にも、目を向ける必要があると考えています。

小波津さんからのメッセージ
ペルー人日本移民が開始して約35年が経過しました。出稼ぎ目的だった当初の目的は既に希薄化し、後続世代が日本社会で多く誕生しています。それでも抱えている問題がなくなったわけではありません。日本社会でペルー人はマイノリティであり、われわれが抱える問題は不可視化されたり、優先度が低下したりする場合もあります。協会を知り、関わっていただくことで問題の解決を一緒にしていければと願っています。
取材を終えて:公認サポーター 市川潤子
ホセさんが開口一番に言った「外国人が日本に来たら、本音と建て前という日本独特の文化を、まずは教えているのです」の言葉が、とてもインパクトがありました。もっと私たち日本人は、外国人の方々に寄り添った伝え方をする必要があるなと感じたのです。
ゴール4の「質の高い教育をみんなに」は、多様化する国内の多国籍の方に訴えているのかもしれません。それをしっかりと支え続けているこの団体に、これからもエールをおくります。
<組織概要>
団体名: | 特定非営利活動法人 日本ペルー共生協会 |
所在地: | 〒194-0012 東京都町田市金森5丁目12番1号 |
設立: | 1999年8月 |
事業内容: |
➀入学・進学に関する事業:母語による入学・進学に関する情報の説明、相談等
②学業に関する事業:母語による学習会、学習における悩み相談等
③アイデンティティーに関する事業:文化継承関連フェスティバルの企画・開催、継承語教育等
④共生のための事業:母語による市・区役所情報の説明
⑤普及啓発活動:ホームページでの情報伝達、スペイン語新聞への情報提供等
⑥情報支援およびネットワーク構築事業:ペルーおよびラテンアメリカとの共生をめざす団体との交渉
⑦調査研究活動:言語能力テストおよび分析結果に基づくアドバイスの実施
⑧その他の目的を達成するために必要な事業
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支部: | 特定非営利活動法人 日本ペルー共生協会神奈川 |
設立: | 2017年3月 |
URL: | https://ajape.org/jp/ |