特定非営利活動法人スマイルリング
団体紹介
NPO法人スマイルリングは、北海道帯広市に事務局を置くNPO法人です。主に児童養護施設で暮らす子どもたちや、児童養護施設・少年院などを退所した若者に対して、社会生活の応援や自立までの伴走支援をする活動を行っています。設立の目的は「どんな境遇の子どもや青少年も、生きる力、夢、安心感を持てるように支援し、広く社会に貢献すること」です。児童養護施設や少年院などを退所した後、頼れる大人がいない若者たちの「生きづらさ」に寄り添い、社会の中での「孤立ではない自立」をサポートすることを重視しています。さらに虐待経験や発達障害などの特性を持つ若者、精神障害や依存症などの問題を抱え、他の支援団体では受け入れが難しい若者も積極的に支援しています。シェアハウス(スマイルリングホーム)の運営や食料支援など、具体的な支援活動を行い、「見守り・つながり・支えていく」という家族のような温かい関係を築きながら、若者たちの自立を支援しています。

HP https://www.npo-smilering.com
該当SDGs 目標番号
インタビュー
理事長 堀田豊稔さん

入れ墨ボクサーとの出会い
1974年生まれ。北海道釧路市出身。少年時代に非行に走り、17歳で暴走族の総長、暴力団、身体に入れ墨を彫り、薬物に溺れ、少年院、刑務所への服役も経験しました。服役中に、親の死を知り、自身の生まれてきた意味を問い、30歳から再出発が始まりました。その後人生を変える数々の出会いがあり、現在の活動に至りました。
堀田さんと同じような人生を送り、ボクシングで立ち直った少年院出身の「入れ墨ボクサー」川嵜竜希さん(スマイルリング理事)と、児童養護施設出身で「平成のKOキング」と呼ばれた元日本チャンピオン、坂本博之さん(同理事)との運命的な出会いがあり、2人の「兄貴」と共に全国の児童養護施設や少年院を訪問するようになったそうです。
そこで出会う子供たちからの「出会えてうれしい! ありがとう!」の言葉に感激したそうですが、施設を出たあとにこそ、誰にも頼ることのできない社会での孤立や、自立に苦労している社会的養護、少年院出身の青年たちの厳しい現実があることを知り、彼らの「社会で孤立しない自立」を応援する事を決意されています。NPO法人スマイルリング、青年たちの就労場所として合同会社スマイルリングを設立されたのも、その経緯からだそうです。

シェアハウスでの食事の様子
社会孤立しないのが自立
堀田さんが課題に挙げるのは「親などに頼ることのできない社会的養護の若者たちの、居住や就労」「物価高騰などによる生活困窮」「悩みや孤独感を抱えていても相談する人や頼る人がいない社会的孤立」です。少年院出院後の若者たちの更生自立を支えることも付け加えていました。
これら課題に向けた具体的な取り組みとして以下のものがあります。「居住支援:自立準備期間のシェアハウス」「就労支援:雇用先へつなぐ、または合同会社スマイルリングでの雇用」「食糧支援:生活困窮の若者への食料品の配布、食事の提供など」「思い出作り支援:成人式などの晴れの日に振り袖や羽織はかまで記念撮影などを行う」「相談支援:対面、電話、LINE等で相談を受け、話し相手となり、問題の解決へと伴走する」「イベント:児童養護施設や少年院でのイベントを通し、子供、若者たちと施設在院中からの関係性を作ることで、社会に出てからの相談のハードルを下げる」「広報活動:講演会や座談会などを通しての地域、社会への啓もう活動」「居場所作り支援:地域の人らが集う自然栽培の畑『ミナイカシ畑』での触れ合い」。
これまでの活動や地域の資源とのつながりで、連携先、社会的資源との関係構築を粘り強く行ってきたことにより、若者たちの多様な悩みに伴走し、なかなか受け入れ先が決まらないような、グレーゾーン、発達障害、依存症などの医療や福祉が必要な、自立困難な若者たちにも、生きる場所を見つけてくることができるようになってきたそうです。

青年宅へ赴いての生活相談で金銭管理学習をしている様子
「暴力的」から「スーパーへ」
堀田さんは「多種多様な連携先とつながることによって、就労が難しい、居場所がなかなか定まらないような自立の難しい青年も取りこぼすことなく、相談に乗れるようになってきたことが大きく前進した点です」と話しています。大人に頼ることの苦手な若者たちが多いものの、同団体には元当事者だった理事が多く、若者たちとの信頼関係は作りやすく、支援する側としても寄り添いやすいそうです。
今後の課題は、まだまだ若者支援が社会的にも足りていない現状をどう訴えていくのか、不安と困難な社会生活を送っている若者たちの現状を国や行政、あらゆる層の人たちと対話していくことや、それを支える私たちの活動運営が持続可能になるための安定した運営資金の解決など、人、モノ、金が足りていない現状を解決することが緊急性を感じるとのことです。
児童養護施設を出たあと、「暴力的」との理由で、地元での居住先や就労事業所などが決まらずスマイルリングへ来た青年がいました。児童養護施設も転々とたらい回しにされた、問題児だったそうです。コミュニケーションが苦手な青年とミナイカシ畑に通ううちに変化が見られ、いつしか畑のマスコット的な人気者となっていきました。約3年を過ごしたあと、本人の希望で地元へ帰り、スーパーに就職。現在2年目だそうです。
青年たちが望む自立のために、必要なことはまだまだ足りておらず、もっと多くの人や社会資源とつながっていく必要があると感じているそうです。就労が難しいグレーゾーンや発達などの特性を持つ青年に対しては、やりがいがあり、喜びを感じられる就労先が必要で、他に見つからないのであれば作り上げていくしかないのではと考えています。例えば、体や環境に優しい、価格が高騰している野菜を育てる水耕栽培などの農福連携などはどうか、など模索しているそうです。

地域での膝詰め座談会を各地域で開催
堀田さんからメッセージ
社会の制度のはざまで親の援助も無く、頼れる実家も無く、生活の基盤も作れずに、住むところや働く場所が見つからず、安心できる居場所も無く、困ったことがあっても誰にも相談できず、孤立する若者たちがいます。また、少年院に入るような非行の進んだ若者たちも、その多くが、これまでの人生で、頼ること、相談できる機会が極端に少なかった若者たちでもあります。
社会の中にそんな若者たちが居ることを知り、共に「どうしたらいいのか」と考える人が一人でも多く増えることが、どんな若者たちも、社会の中で生き生きと自信を持って生きていける世の中への第一歩ではないかと思っています。
取材を終えて:公認サポーター 市川潤子
北海道の冬は、1ヶ月の光熱費がどのくらいだと思いますか。灯油代だけで、ここのシェアハウスでは4万円だったそうです。(子どもたちがストーブを炊きすぎた結果が4万円で、普通の家庭だったら1万円〜2万円ぐらいだそうです)昨今の光熱費や食費の高騰は、全国どこでも悩みの種です。刑務所から出所してきた子たちの生活費は(北海道の平均的な一人暮らしの生活費が大体15万円です)一人約15万円は掛かるそうですが、堀田さんは「田舎では車の免許ないと、仕事もできないから半額援助しているのですよ」と大変なご負担を笑顔でサラッと言いました。(合同会社の青年に限り、免許代の半額をみているそうです)
これだけを聞いても、人1名を自立させるのにどれほどの道のりがあるのか理解できました。それでも堀田さんの信念には、ご自身が通ってきたさまざまな苦難をベースに「みんなで幸せになる」という思いがあふれていました。その愛情の深さは、並大抵の忍耐ではありません。「みんな、凄く可愛いところが沢山あるんですよね。あの子達が大好きだから出来る活動で、我慢ばかりしているのではなく、どの子との付き合いも、根気強く、そして出会いを楽しんで取り組んでいます」そう言いながら、堀田さんは面倒を見ています。もう、脱帽です。
ゴール10「人や国の不平等をなくそう」を地道に歩むこの団体を、これからも応援しています。取材で2回も感動して泣いてしまった、今回の時間でしたが改めて経験者のたくましい生きざまに触れました。北海道、千葉県そして栃木県と、3拠点同時オンライン取材でしたがどこにいても、社会問題に真剣に向き合う心は一つでした。ご対応くださった理事の野々村千晶さんも、どうもありがとうございました!