公益財団法人横浜市緑の協会

団体紹介
横浜市を豊かに彩る
2024年で設立40周年を迎えた公益財団法人横浜市緑の協会は、主に緑化推進事業、公園事業、動物園事業、収益事業の4つの事業を展開し、SDGsに幅広く取り組んでいます。市民に豊かな憩いの場を提供するため、管理する動物園や公園ではイベントの企画・運営も実施。多岐に渡る活動を通して公共福祉の増進を図っています。

HP https://www.hama-midorinokyokai.or.jp/
該当SDGs 目標番号
インタビュー
公益財団法人横浜市緑の協会
総務部経営企画課 川口芳矢さん

横浜市緑の協会は1976年に任意団体「横浜市公園協会」から始まり、2012年に神奈川県より公益認定を受けたことで現在の「公益財団法人横浜市緑の協会」として活動を行っています。事業内容は、緑化推進事業、公園事業、動物園事業、経営事業の4つが主軸です。
私自身は幼少から動物が好きで、大学ではチンパンジーの観察を行っていました。「よこはま動物園ズーラシア」(以下、ズーラシア)のオープンと共にズーラシアで飼育員となり、2020年には「金沢動物園」へ異動し広報を担当、2024年からは本社の経営企画課に所属しています。
日常から繋がる、を意識
私たちのSDGs関連事業は多岐に渡ります。中でも、主に公園や動物園の管理・運営を行っているため、環境に付随した取り組みが多いです。いくつかご紹介すると、緑化推進、公園・動物園・植物園における生物多様性の保全、動植物に関する教育普及、地域活性化、西洋館など歴史的建造物の保全、職員が働きやすい環境づくりなどが挙げられます。
「横浜市緑の協会 SDGs達成に向けた取組」は2021年4月に策定しましたが、2024年11月には更に、ネイチャーポジティブ(自然再興のため、生物多様性の喪失を阻止し回復させること 以下、NP)とネイチャーベースドソリューション(社会的課題を自然と人との両者に利益のある形で解決すること 以下、NbS)にも言及した内容に改訂しました。これには、職員に自分たちの日頃の業務がSDGsの達成やNP・NbSの貢献に繋がっている認識をもってもらいたい、という思いがあります。
SDGsの教育は内外を問わず力を入れている活動です。職員には、外部講師による講話や、社内の秀逸な取組事例を相互共有するなどの社内研修を行うことで、SDGsに対する理解を深め、業務の再認識を図っています。来園者や市民の皆様には、園内プログラムや生き物の保全活動への参加などを通し、SDGsの達成に向けて関心を持っていただけるよう取り組んでいます。私がズーラシアで勤務していた際は、生息地の野生動物とヒトの関係を紹介した「あなたと一緒に考える、チンパンジーの森の未来」というプログラムを開催しました。参加者からは、現地の話を聞ける貴重な機会だったと感じてもらえたようです。これらの活動は共通して、日常生活がSDGsに繋がっていると知り、当事者意識をもってもらう目的で行っています。

また、金沢動物園では、SDGs関連の活動をしている地元企業にお声かけして、環境に配慮した自社製品の販売をしてもらうイベントを開催しました。大手企業をはじめ、一年草(一年で枯れる植物)で通常廃棄となるバナナの茎の繊維で製紙をおこなう団体などに出展いただき、商品の販売を通じて、森林減少などの環境問題と、貧困などの社会課題の解決に向けた啓発を行いました。この他、岸根公園などの公園では、地元の農家さんやパン屋さんを招き、マルシェを行っています。地産地消への貢献だけでなく、高齢で遠出がしづらい地元の方へ買い物をする場所の提供などに取り組みました。
私はこのような取組を通じて、普段の消費活動でSDGsに貢献できることを市民の皆さんに知ってもらえたと感じています。

成果の可視化が課題
SDGsの達成目標は一朝一夕ではいかないケースがほとんどで、結果が出るまでに年単位の時間を要します。また、成果を数値で具体的に表せるものが少なく、可視化が大きな課題です。例えばグリーン電力の発電量、廃棄物の削減量などは数字で表せますが、先述したようなイベントによって参加者のSDGsへの意識が高まったか、などは度合いを数値として測ることが難しいのが現状です。とはいえ、具体的な数は説得力をもちます。容易に解決できない目標を達成するには長期的な活動が不可欠です。つまり、活動の規模の拡大及び活動のモチベーション維持が重要となります。今後はSDGs活動の積極化のために、より成果を可視化することに努め、皆さんの賛同を得られるように情報提供していきたいと思っています。
川口さんからのメッセージ
生物多様性の保全や気候変動への対策など、SDGsで取り組む課題は地球規模で遠い問題と感じやすいですよね。しかし、日々の私たちの暮らしがそれらに繋がっていると気づいて欲しいなと思います。そして、実際の行動に移せる機会が増えると嬉しいです。
皆さんが当たり前だと感じていることも、少し意識をもって見つめなおすと新たな発見があるはずです。公園で四季の移り変わりを感じたり、動物園の種の保全という役割を知って来園したりすることもいいですね。金沢動物園では、粘り強く園地の環境整備をした結果、しばらく見られていなかった希少種の植物が再び見られるようになっています。ぜひ、見慣れた場所に違った目線を持つことで、いつもとは違った景色に出会って欲しいです。
私たちは動物園、植物園、公園などで様々なイベントを開催しています。緑地や自然に関心を寄せ、皆さんにもイベントに参加してもらえたら嬉しいです。
取材を終えて:編集委員 坂本瑛帆
以前横浜に住んでいた際に、野毛山動物園によく散歩で訪れていました。カグーという鳥が好きで、見物客の動きについて行くちょこちょことした足取りが愛らしく、目を引かれ眺めていた記憶です。当時はそんなごくありふれた理由から動物園に足を運んでいましたが、今回川口さんのお話をおうかがいし、動物園には種の繁殖や保全の役割があると改めて知りました。カグーは日本の動物園では野毛山動物園でしか見られない非常に貴重な鳥です。次に訪れる際には、そんな目線も持ちながら動物園を訪れたいと思いました。
※掲載の写真は公益財団法人横浜市緑の協会よりご提供いただきました。