香取市地域サロン「アンダンテ」
団体紹介
千葉県香取市が推進する高齢者向け地域コミュニティ作り施策は、65歳以上の市民が移動の心配なく気軽に集える場を提供し、孤立や閉じこもりの予防を目指しています。同市の介護予防サポーター養成講座修了者が運営主体となり、公民館などで月1回以上の定期開催、参加者同士の交流や健康増進活動をしており、運営には年間12万までの事業補助金があります。備品購入や施設のバリアフリー化の支援の検討もあります。当地域サロン「アンダンテ」は令和5年度まで事業補助金を受け、令和6年度より補助金外で自活できる地域サロンを目指して活動をしています。

該当SDGs 目標番号
インタビュー
畔栁世津子さん

オンラインで豊かに
医療福祉の相談を30年している介護福祉士。急性期病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)として10年従事後、2011年に曹洞宗寺院に嫁いだ。2018年より千葉県香取市介護予防地域サロン「アンダンテ」を主宰し、コロナ禍でオンライン活動を展開しました。2023年よりデジタル庁デジタル推進員に就任し、オンラインで得られる豊かさを老若男女へ伝えています。
ゆめのたねラジオを始め、外国人留学生との文化交流も実施しています。曹洞宗千葉県宗務所寺族会事務局として寺族のデジタル化にも取り組んでいます。
活動のきっかけは、人がまだ活躍できる可能性を持ちながら、疾病や人間関係、地域性によって活躍の場を縮小していく姿を目の当たりにしたことでした。
コロナ禍での地域サロン活動休止中にLINEビデオで配信した花まつり。退院直後のシニアがLINE越しに読経。お焼香したいと、LINE越しで一緒に手を合わせてくださったのです。次回から参加者全員で活動が再開できました。その手応えから、テクノロジーを活用した過疎でも新しい活躍の場づくり・仲間づくりを決意しました。


思いを吐き出せる所
お寺という誰もが受け入れやすい場所性を活かし、14年かけて地域の誰もが訪れやすい居場所づくりに成功しました。特に外出に制約があった女性たちにとって「お寺へ行く」という理由が、家族の理解を得やすく、自然な外出の機会となりました。その結果、健康寿命延伸の場としてだけではなく、疾病や家族間の悩み、介護、遺族の感情などデリケートな思いを安心して吐露できる心のよりどころとして機能しています。
今後の課題は、年齢を重ねて尚、誇り高い男性への支援強化を考えています。身体機能の低下や同世代の死による孤独感・悲壮感を打ち明けられない男性に特化した居場所づくりを目指したいと思います。また大切な人を失った遺族へのケアの充実と、働き盛りで燃え尽き症候群に陥る孤立感・責任感を打ち明けられない世代との世代間交流の場の創出も急務と感じています。各世代の特性に配慮した安心して本音を語れる環境づくりに取り組みたいと思っています。
お寺においでになられた方から「この足さえ治れば、まだ田んぼができるのに」という切実な声を聴きました。僅か20キロ圏内の医療情報すら届かない地域の現実に直面したのです。私たち医療福祉専門職の助言より親戚の口コミを重視する風土に、医療と地域の距離を痛感しました。そこで、農業を健康寿命延伸の軸に据え、整形外科医と30名の医療職ボランティアと共にロコモ予防活動を開始。正しい医療情報と地域の暮らしを橋渡しする取り組みが人々の生きがいを支える活動へと発展したと思っています。
今後の展望としては、全ての人に正しい情報を伝えて健康と福祉の実現に向け、男性専用の居場所作りと遺族ケアの展開をしたいです。社会的制約を超えた心の健康支援ですね。働きがいと経済成長の観点では、燃え尽き症候群予防の若者支援の実施も必要かと思っています。人や国の不平等をなくそうとして、テクノロジーを活用した過疎地での情報格差解消と、居場所づくりを推進する予定です。寺院という伝統的な場を生かしながら、さみしんぼうをもう作らない地域共生社会の実現を目指したいと思っています。

畔柳さんからのメッセージ
30年間変わらぬ願いは、私が知る誰もが今日一日を楽しく幸せに、心豊かに笑顔で感謝が出来れば、それだけで幸せの始まりです。困った時は「お互いさま」と分かち合える心が今を生きる実感を生みます。生きとし生けるものと純粋な関係性を築きたいなら、「ありがとう」「ごめんなさい」」「助けてください」と素直に伝えてください。明日の笑顔になるつながることがしたいなら、今日一日を丁寧に生きることから始めて自分に「ありがとう」と伝えてください。いつでも再出発。新しい扉は開けてください。「変わらないが代わり続ける原動力」これこそが美しいと感じる者より。
取材を終えて:公認サポーター 市川潤子
ゴール11の「住み続けられるまちづくりを」に真剣に取り組まれていらっしゃる団体でした。例えばもし、あなたが移住したとします。都心より圧倒的に人と逢う回数が少ない。新参者として、地域に溶け込めるかの不安が頭の中をよぎるかもしれませんね。その中で、誰かが真剣に寄り添い声をかけてくれる喜びを痛感したい。
世津子さんには、どんな方々も包み込む優しさがあります。人様の安穏を願い、地域の為に尽力されているお姿は頼もしいですね。どうかこれからも、新参者をその優しさと明るさで包み込んで差し上げて下さい。応援し続けたい団体でした。ますますのご活躍をお祈りいたします。
<組織概要>
団体名: | 香取市地域サロン「アンダンテ」 |
所在地: | 〒287−0018 千葉県香取市丁子998 龍光院内 |
設立: | 2018年5月 |
事業内容: | 介護予防活動 |