特定非営利活動法人そらいろコアラ
団体紹介
「そらいろコアラ」は、栃木県全域で妊娠・育児期の家庭に包括的な支援を提供するNPO法人です。妊娠・出産・子育ての中で、誰もが孤立しないように、無料LINE相談窓口「コアLINE」を運営しています。また、子どもが子どもらしく過ごし、親が安心してつながれる場として、栃木県真岡市で地域と連携した「そらいろポケット」という居場所や子ども食堂も展開しています。医療・福祉・教育の専門職や多世代のボランティアが協力し、誰もが安心して暮らせる地域づくりを目指しています。是非、望まない妊娠や誰にも相談出来ないお悩みを助けたいので、当団体のステッカーをお手洗い等に貼って頂ける商業施設様がいらっしゃったら、ご協力下さい。
HP https://npo-sorairokoala.jimdofree.com/
該当SDGs 目標番号
インタビュー
医師・共同代表理事 増田卓哉さん
栃木県小山市出身。自治医科大学を卒業後、栃木県内の医療機関や診療所で勤務。小児科専門医・子どものこころ専門医として、栃木県立リハビリテーションセンター小児科と自治医科大学小児科に所属しています。2020年にNPO法人「そらいろコアラ」を設立し、多職種や地域の力を活かして、妊娠・育児期の家庭を包括的にサポートしています。医療現場で感じた課題から、孤立しがちな家庭や支援を求めにくい方々が安心して繋がる仕組みづくりに取り組んでいます。
医学生時代に没頭した、DVに苦しむ女性や子どもを支援するボランティア活動が私の原点です。小児科医として働く中で、家庭内の問題に踏み込む難しさや、声を上げられない人々の存在に気づかされました。子育てに孤立感を抱える母親から「私、虐待しています」とSOSが寄せられたことや、「家に帰りたくない」と話してくれた子どもに安心できる居場所が見つからなかったという二つの経験が、NPO法人を設立する決意につながりました。
自己責任社会を変えたい
「不適切な養育とその連鎖を、自分たちの世代で止めたい」というのが私たちのミッションです。「助けて」と言えない前提で、子どもや家庭が孤立しない地域づくりに取り組んでいます。医療現場では、子育ての不安や世代を超えた問題の連鎖など、多くのリスクに気づくことがあります。解決したいと考える医療者がいても、家庭内に踏み込むのは容易ではありません。支援を求められなかったことが自己責任とされる社会を変えたいと願っています。
365日対応のLINE相談窓口
「そらいろコアラ」では、365日対応のLINE相談窓口「コアLINE」を通じて、妊娠・出産・育児に関する困りごとを無料で受け付けています。また、栃木県真岡市の「そらいろポケット」では、子どもと親のための居場所づくりに取り組んでおり、地域に根ざした子ども食堂「コアラ食堂」や、親子で参加できる自然体験イベント「そらいろKidsクラブ」などを通して、繋がるため、見守るためのアウトリーチ活動を行っています。
活動を通じて、地域の方々が「地域で子育て」を共に支える風土が生まれてきたことが成果の一つです。医療・福祉・教育などの専門職と連携し、多世代のボランティアの方々にもご協力いただいています。今後の課題としては、活動資金の安定化、支援範囲の拡大、他地域への展開、そして特に支援が必要な家庭に確実に手を差し伸べられる仕組みづくりが挙げられます。
LINE相談を通じて、未受診の妊婦さんが医療機関を受診したり、周囲に相談したりするケースが増え、誰にも相談できずに悲惨な状況に陥ることを防げていると感じています。また、医療機関や地域行政の連携だけではサポートが届かなかった家庭が、安全な場所とつながり、困ったときに気軽に声をかけられる関係を築けたことも大きな励みです。多職種や多世代の地域の力に支えられ、心強い成果が生まれています。
目指すは自己責任論からの解放
「そらいろコアラ」のモデルを、家庭・自治体・医療機関をつなぐ民間NPOの仕組みとして、他の地域でも活用できるよう展開したいと考えています。業務の効率化のためにAI技術も取り入れながら、より多くの方に迅速で持続可能なサポートを提供できる体制づくりを進めています。しかし、人と人のつながりや地域コミュニティの力を最も大切にし、誰もが排除されず、安心して暮らせる社会を目指しています。自己責任論から解き放たれたマインドを次世代にもつなげていきたいと願っています。
増田卓哉さんからのメッセージ
「助けて」と声を上げ、困りごとに向き合うことは、とても難しいことです。人それぞれに事情を抱えながら生まれ育ち、そして子育てをしていますが、誰もが排除されず、どんな気持ちも受け入れられる社会であってほしいと願っています。どんな空の下で育ち、今日の空がどんな色であっても、コアラのポケットのような安全な場所にしたいという想いで団体を立ち上げました。共感してくださる方は、ぜひボランティアやサポーターとしてご参加いただけると嬉しいです。
取材を終えて:公認サポーター 市川潤子
一体いつから、日本社会は何でも「自己責任」と投げかけて来る様になったのでしょうか。散々甘い汁を吸った者たちが、逃げる時に使う、突き放す様なその言葉に怒りが込み上げてきます。だからこそ、そんな現代にそらいろコアラさんのご活動は、一筋の強い光となっているのです。増田さんの経験値が高いのは、やはり学生時代に地道にボランティア活動をされていた点に尽きると思います。つまり若い頃から、視界が広かったのでしょう。ゴール3の「すべての人に健康と福祉を」は、彼の道程を物語っています。人様の痛み、苦しみを現場で見てきた者にしか理解出来ない事を、経験を通じて熟知しているのです。私たちは次世代に負の連鎖を渡しては、いけません。そして、家庭内で抱えきれない問題が多すぎる事に声をあげませんか。そらいろコアラさんのご活動を見習って、一人でも多くの方々が共に社会を支える担い手になる事を心から願います。これからもずっと支え続けたい団体でした。