一般社団法人ヒトナリ
団体紹介
一般社団法人ヒトナリは「ひとがとなり合う景色」をつくるというコンセプトで、社会課題の解決に寄与するコミニティデザインに取り組んでいます。望まない孤立や孤独を抱えているすべての人が幸せに向かえるように、人のつながりや居場所づくりに取り組む組織です。運営する地域交流拠点「ソーシャルハウス宝島」で、フリースクールや地域サロン、こども食堂など多様な取り組みを行っており、年間5000人以上が集います。これからも世の中に必要な社会資源をつくり続けていくことで、世の中の生きづらさをゆるめていきたいと考えています。
HP https://hitonari-social.com/
該当SDGs 目標番号
インタビュー
代表理事 上田潤さん
コロナ禍からつながりへ
山梨県南アルプス市出身で、高校までは県内で過ごし、大学から東京へ出ました。卒業してそのまま都内へ就職後、サラリーマンとして数社をジョブホップし、マスコミ、宿泊業、地域商社事業など、様々な職種を経験してきました。2020年10月に山梨県富士吉田市の地域おこし協力隊へ着任し、高齢者の孤立対策や、不登校の子どもたちの支援、地域交流拠点の運営等を行い、2023年5月に一般社団法人ヒトナリを設立しました。
コロナ禍で自分の人生について振り返り、これからのことを考える時間が増えました。社会的な孤独や孤立に拍車がかかり、ウイルスとともに不安や悲しみが伝播していく世の中で、ずっとサラリーマンとして売上や成果を求めて働いてきた僕にできることはあまりないような気がしました。そんな力不足を感じるとともに、世の中のため、人の命や暮らしに寄り添った活動をして生きていきたいと考えるようになり、地域おこし協力隊として「人のつながりづくり」をテーマに活動を始めました。
ともに生きていく文化の醸成
社会的な孤立をなくして、人々の暮らしの安心感やよりよい人生を選択できる環境をつくっていきたいと考えています。貧困、不登校、高齢化など、世の中に様々な社会課題はあれど、福祉や社会保障の枠組みだけではさまざまな隙間が生まれてしまい、抜本的な解決に至っていないのが現実。共通している社会的孤立に作用し、「ともに生きていく文化の醸成」を目指して、人のつながりづくり・居場所づくりに寄与するコミニティデザインが必要だと考えています。
そこで、空き家だった一軒家を地域の交流拠点として活用しています。不登校支援として、フリースクールの運営、学習支援(個別の学習指導)、ホームスクールサポート(家庭訪問型支援)、不登校の親の会開催、その他イベント開催などを行っています。子育て支援として、地域食堂の開催、高齢者への取り組みとして、地域サロンの開催(孤立・介護予防)、飲食事業(協働モデル開発)などを行っています。また、社会課題をみんなのものにしていくため、講演や登壇、執筆等の活動も行っています。
多様な暮らしが交ざり合う
成功した点はひとつの事業所で多様な取り組みを行ったことにより、ごちゃまぜの空間ができて、様々な暮らしが交ざりあったこと。属性ごとに区分けした居場所づくりや支援では生まれない人のつながりが生まれたと認識しています。課題としては、多様な取り組みを行ったことにより、少ないリソースが分散してしまい、各分野がまだまだ目指す姿に遠く及んでいないことです。会社の体力と取り組みの量のバランスが取れていないので精査していく必要があると考えています。
この活動の中で、末期がんのおばあちゃんと友だちになったことが特に印象に残っています。知人の祖母でしたが、余命半年と宣告されて他県から地域へ引っ越して来ました。知らない地域で知る人もいないので、一緒に活動しようと誘いました。週に一度一緒にお昼を作って食べるだけでしたが、彼女は会うたびに「みんながいてくれること、この場所があることが生きがいだよ」と伝えてくれました。ゆっくりと命を燃やしていく姿をみんなで見送りました。命の大切さを教えてくれた彼女に感謝しています。
まだまだある、未来への展望
まちぐるみで社会課題に向かう、先進的なエコシステムの構築を目指します。僕らだけでなく、非営利活動団体全体が持続可能となるようなところまで作用していきたいです。ファンドレイジング、企業や行政との事業連携はもちろん、自主事業でマネタイズをできるようにして、そのノウハウを拡散していき、新たな活動家を生んでいくことが目標です。まずは来年一年間で弊社の関係人口を何倍にも増やしていきたいです。
上田さんからのメッセージ
僕らだけでの小さな力では、社会的な孤立をゼロにすることは到底叶いません。みなさんの力を借りて、より多くの方と一緒に進んで行く必要があります。社会課題を有志がどうにかするのではなく、世の中全体のものにするために、講演やイベント等でお話させて頂ける機会や、連携できる企業、団体の皆様を全国から募っています。もし興味を持っていただけた方がいらっしゃったら、是非気軽にご連絡ください。どなかたをご紹介、お繋ぎいただくこともとてもありがたく思います。
取材を終えて:公認サポーター 市川潤子
「みんなで生きていこう!という文化をつくりたいのです」。開口一番、上田さんは明るくおっしゃいました。その後のご説明でご自身が24歳で癌を患い、27歳でうつ病になり、それらを乗り越えて今がある経緯を打ち明けて下さいました。だから言葉の重みと説得力を感じたのです。私のその気持ちを話したら、上田さんは「うつ病後こう思ったのですよ。『ちゃんと生きてえな。もっと自分の大切にしたい事を、全うしたいな』って。だから、今みんなと生きる活動が出来て幸せなんです。現代の子どもたちには、僕が適当に生きるザコキャラでいる事が大事でね、こういう人もいるからさ、みんなも社会に頼っていいんだよって伝えたいですね」。飾らない言葉がサラッと出るのは、上田さんの魅力です。その直後には、真剣な眼差しに変わりこう言いました。「僕は社会システムエラーにキレているのですよ。だって、それおかしいでしょ!って事が社会には沢山ありませんか?未来の子どもたちを守れない大人なんか、アホなんじゃないかと思っています。自分たちの利益しか追求しない企業なんか、潰れてしまえと言いたいですからね」。この情熱が、上田さんの原動力であり、この団体の思いそのものであると感じました。ゴール11の「住み続けられるまちづくりを」を実践し、現場の声を素直に叫んでいる一般社団法人ヒトナリをこれからもずっと応援していたいです。