ローカルSDGs アクションフォーラム

参加団体の活動紹介

医療的ケア児と、支えるご家族に見える多様な課題

NPO法人うりずん

団体紹介

うりずんは認定NPO法人となってから全国からご寄付をいただき、なんとか運営ができるようになりました。2016年、日本財団他の支援を得て新拠点を建設。現在、日中一時支援、児童発達支援、放課後等デイサービス、居宅介護、移動支援、重度訪問介護、相談支援等を行っています。栃木県から委託を受けて、小児在宅医療体制構築事業、栃木県医療的ケア児等支援センターくくるんを運営しています。

NPO法人うりずん

該当SDGs 目標番号

インタビュー

NPO法人うりずん 理事長 髙橋昭彦さん

NPO法人うりずん 理事長 髙橋昭彦さん

重度の子どもを預かり可能に

1985年自治医大卒業。滋賀県で地域医療と小児医療に従事のあと、栃木県で在宅医療を始める。2001年9月ホスピス研修のためニューヨーク滞在中、同時多発テロ事件に遭遇。2002年「ひばりクリニック」を宇都宮市に開業。人工呼吸器、経管栄養など、医療的ケアが必要な子どもを預かる「うりずん」を2008年に開所。2012年NPO法人うりずん設立し、2016年に新拠点を開設した。2022年うりずんが、栃木県医療的ケア児等支援センター「くくるん」を受託。日本小児科学会小児科専門医。2016年に日本医師会 第4回赤ひげ大賞。

取り組みのきっかけは、2006年秋、人工呼吸器をつけた子どもの家を訪問したところ、お母さんが高熱で寝込み、お父さんが仕事を休んで介護をされ、普通じゃないと思ったところからです。誰も預かる人がいなかったのです。そこで、人工呼吸器をつけた子どもの預かりを勇美記念財団の研究事業で行い、民間の診療所でも人工呼吸器をつけた子どもの預かりが可能なことを実証しました。これを受けて、宇都宮市が日中一時支援の新たな制度を創設し、2008年6月からうりずんを始めることができました。まさかと思いましたが、制度ができました。これが、この道を進む契機となりました。

多職種のサポートで負担軽減

医療的ケア児の日中預かりを、民間の診療所併設事業所で行えることを実証し、医療的ケア児のケアのために、看護の力に加えて、保育や介護など、多職種が関わることで、遊びや外出の支援ができ、家族の負担軽減が可能となりました。

保育や教育、移動支援の制度の充実、18歳過ぎた医療的ケア者の日中活動の場、地域で顔見知りのスタッフがいて夜も泊まれる事業所、お風呂の7分の7(週に7日お風呂に入ろうと思えば入れる環境のこと)、最終的に地域の中で親に頼らずに暮らしていける「家」、などが課題です。

多職種のサポートで負担軽減

ご家族・きょうだいにも目を向ける

医療的ケア児の訪問の際、当事者のお姉さんが「なかなか会えなくなるので」と挨拶をしてくれました。お姉さんは、大学に入りしばらくして不登校となった時、「お母さんは○○のほうしか見ていなかった!」と初めて言うことができました。それから親子関係をやり直し、復学し、無事に卒業の日を迎えたのです。就職が決まり、遠くに行くので、私に挨拶をしてくれました。これ以降、きょうだいに関心を持ち、できることをやろうと思いました。お姉さんのすっきりとした顔を見て、今後の前途を願いました。

人材育成と社会資源の開拓を

2021年、医療的ケア児支援法が施行され、保育や療育、教育などの充実が見られるようになってきました。しかし、18歳を過ぎた医療的ケア者の社会参加、親が介護から卒業できるような仕組みはできていません。きょうだい支援も制度がほとんどありません。今後、18歳以降の日中活動の場、泊り、グループホームやシェアハウスなど、大人になった医療的ケア者が、社会の中で自立した暮らしができるよう、人材育成と、社会資源の開拓、そして誰もが支えあえる社会を目指して、取り組んでいきたいと思います。

人材育成と社会資源の開拓を

髙橋さんからメッセージ

親は、仕事や通常の子育てをしながら、障害のある子どもに必要な、通院や日々のケアをします。親だってほっとひと息つきたい、誰かに相談したい、そんなときに、あたたかく迎えてくれるところが近くにあると、子育てはもう少し楽になるのではないでしょうか。

ひとり親家庭や、さまざまな事情があって、子育てに助けが必要な家庭も増えています。貧困や孤立は、子どもと家族の、体と心の健康を奪います。声をかける、手助けする、フードバンクに寄付をするなど、少しだけお節介になっていただけませんか。

きっと最重度の子どもときょうだい、家族が当たり前に暮らしていける社会は、誰もが当たり前に暮らしていける社会だと考えています。

取材を終えて:公認サポーター 市川潤子

医療的ケア児をサポートする側は、24時間体制で多くの対応を迫られるそうです。「1痰の吸引 2人工呼吸器のアラームが鳴る(管が外れた、痰がつまっている、体調が悪い、電源が入っていない等) 3尿の管 4流動食(経管栄養からの注入、ミキサー食、準備と後片付け) 5酸素吸入(外出時は酸素ボンベ持参)」。その他、ケア児の他にお子さんがいればその子育てもありますが幼稚園の送迎をしてあげたくても、ケア児へのヘルパーさんのサポートが無いと「普通」と呼ばれる日常が、叶いません。髙橋先生は穏やかな口調で、こう仰いました。「悔しい事が3つあるのです。1お金が足りない。2人手が足りない。3社会の理解が足りない。ですから、誰でも医療的ケア児の親になる可能性はあるのだから、みんなで一緒に支えていきましょうって言いたいのです」。ゴール16の「平和と公正を全ての人に」。この言葉を願ってやみません。これからも、社会全体で応援すべき団体でした。
<組織概要>
団体名:認定特定非営利活動法人うりずん
所在地:〒321-2116 宇都宮市徳次郎町365-1
設立:2012年3月
事業内容: 重い障害を持つ方や、医療依存度の高い方とその家族の地域生活を守るために、自宅以外で日中過ごせる場所(日中一時支援・児童発達支援・放課後等デイサービス)、ご自宅での見守り(居宅介護・重度訪問介護)、外出のお手伝い(移動支援・通院等介助)、相談支援を行っています。また、栃木県の医療政策課や障害福祉課からの委託を受け、小児在宅医療体制構築事業や、栃木県医療的ケア児等支援センター「くくるん」の運営を行っています。
URL: https://npourizn.org/