
認定NPO法人自然環境復元協会(NAREC(ナレック))
団体紹介
社会のバランスを取り戻す
社会の変化と共に、かつて豊かであった自然環境は姿を消しつつあります。認定NPO法人 自然環境復元協会(以下、NAREC)は自然を復元するために、環境保全活動と保全のための人材育成をおこなっています。「環境と共生する持続可能な社会をつくる人材である環境再生医の養成」「都市と農村を結び、問題解決と地域活性化を目指すふるさと未来創造プロジェクト」「ボランティア不足の環境保全団体とボランティア志願者を繋ぐレンジャーズプロジェクト」の3つの柱を軸に、自然の中で生きる人を育てています。

HP https://narec.or.jp/
該当SDGs 目標番号
インタビュー
認定NPO法人 自然環境復元協会 未来塾コーディネーター 石黒燈さん

自然とヒトを共に育てる
NARECは活動全体のミッションとして、自然環境の復元と復元活動をおこなう人の育成を掲げています。前者はさらに都市と農山漁村で内容が分かれます。都市では緑地や公園の管理を目的とし、レンジャーズプロジェクトを実行しています。現在、地域のボランティア団体は次第に高齢化が進み、担い手不足という課題を抱えています。一方で、ボランティアをしたいけれど、どこで活動したらよいか分からないという若者もいます。人員不足に悩むボランティア団体と環境に関わる活動をしたい若者をマッチングし、両者の課題解決を図るのがレンジャーズプロジェクトです。
農山漁村では「ふるさとみらい創造プロジェクト」として、農山漁村と都市を結び、協同することで諸問題に取り組んでいます。中でも大きな活動が、環境系学生未来塾(以下、未来塾)です。未来塾では環境系の分野に関心のある大学生・社会人を対象に、自然の中で自分自身と向き合うためのワークショップ型合宿を開催しています。学生は地域の人や参加者との関わりを通し、自己理解と新たな価値観を創造できます。未来塾は農山漁村にとっても活動のアピールや若者の感性に触れられる機会であるため、参加者すべてにとって有意義な時間を提供します。合宿終了後も未来塾開催地に戻る参加学生が多いので、関係人口(地域と強い関係をもった人)を作る意味でも意義のある活動だと感じています。
もう一つの活動の柱に、環境再生医という人材育成の事業があります。環境の保全は、知識や技術をもっているだけではインパクトを出すことが困難です。周りの人を巻き込み、意味のあるプロジェクトを遂行するヒューマンスキルが必要となります。私たちは環境再生医という資格制度を制定し、環境保全について技術力と人間力を持ち合わせた人を育てています。

参加生からコーディネーターへ
私は今、NARECで主に未来塾のコーディネーターをしていますが、元々は未来塾の参加生でした。東京で生まれ育った私にとって、自然は身近なものではありませんでしたが、幼少期に両親が里山や自然に触れる機会を与えてくれました。おかげで、自然環境との距離がぐっと近づいたと思います。昔から生き物も好きだったので、次第に生物の生息環境である自然に興味をもつようになりました。
大学時代は森林科学を学び、将来は自然の素晴らしさを伝える仕事をしたいと思いましたが、都市で環境に関わる仕事というと、役場や林業会社で働くことで希望とは異なったのです。他にどんな仕事があるのか分からず、悩んでいた折に紹介してもらったのが未来塾でした。屋久島でおこなわれた第二回未来塾に参加し、自然に関わりながら生きる人と触れ合い、やりたいことが明確化しました。その結果、NARECに就職し、現在は未来塾のコーディネーターとして合宿に参加する学生を迎えています。

現場に資源を送るハブ
NARECは、現場にヒト・モノ・カネを送り込むポジションを担っています。自然について求めているものがある人同士を結び付ける、マッチングをしている立場なので、両者の結びつきが生まれることがやりがいです。具体的には、未来塾に参加した学生が送り込み先団体でのインターン実施、都市から農山漁村に移住する人もいます。特に未来塾では、変化が多いタイミングである大学生の参加者が多いので、一人ひとりの人生に関わっている感覚が強く、寄り添えることが励みです。都市においても、レンジャーズプロジェクトで一度参加したボランティア団体に加盟して、毎週活動に参加する事例もあります。環境保全だけではなく、人を結び、地域の活性化に関われている事実がモチベーションです。
一方で、社会に大きなインパクトを与えられているかというとそうではありません。NARECは今、経済的にも人的にもミニマムな状態で活動しています。活動を展開するためにNARECをもっと大きくする手もありますが、現在は深刻な人手不足です。人員確保が容易でない以上、今あるリソースで最大限の結果をもたらせるよう考えていく必要があると感じています。

自然と人の懸け橋に
SDGsという言葉が広がり、以前よりも環境に対しての意識は高まったかもしれません。しかし、そもそもSDGsを考えなくてはならない状況になったのはなぜでしょうか。それは、自然を置き去りにし、経済利益を重視した結果です。残念ながらSDGsですら、経済の引力が働いて取り組む人や企業が多いのが現状でしょう。
生活している場所を問わず、私たちはみな自然に生かされています。都市での暮らしでは自然との繋がりがどうしても見えにくくなりますが、例えば、息をするにも植物が生み出してくれた酸素を吸っていますし、食事をするにも自然の恵みを頂いているのです。しかし、環境との繋がりが希薄に思える中でおこなう環境保全の取り組みは、行動する側の負担になると思います。だからこそ私たちが懸け橋となり、人と自然は一体であると自覚できる人を増やしていく活動をしているのです。そこには、自ずと自分の行動が環境にどう影響を与えるかを考え、動ける人が増えれば、結果的に自然を保全する目的に繋がる、という思いがあります。
昨今は、SDGsという言葉だけが先行しているところがあるのではないでしょうか。何においてもですが、流行は同時に質の低下を招きます。本当に意味のある行動をするためには、まず実際の経験を大切にして欲しいと思います。
石黒さんからのメッセージ
実体験がエネルギーになる
自然体験を通して、人が自然に支えられていることを自覚した時の表情の変化に私は希望を感じています。孤独に生き抜いてきたと思っていた人生が、多くのサポートで成り立っていたという実感を得る経験は、実は自然環境が復元されるために、なにより重要な要素です。勿論、環境再生のための工事をするなど大きな仕組みの改変も大事ですが、私は己の実感を伴って行動してくれる人が増えることに強い意義を感じています。
もし、自然環境に興味があればぜひ現場に足を運んでみてください。入り口は承認や賞賛でも構いません。しかし体験する中で、内側から湧き出る、自分がこれに人生を費やしたいと思えるものがあれば、次第に動機も変わってくるはずです。NARECでは、都市においてはほぼ毎週末レンジャーズプロジェクトをおこなっています。個人としても、都市で自然に触れられるワークショップを拡大していく方針です。農山漁村に関心があれば、屋久島で環境再生の現場を学ぶスタディーツアーも企画しています。自然を知り、触れ合える機会を沢山用意しておりますので、ぜひ一歩踏み出してのご参加をお待ちしております。

取材を終えて:編集委員 坂本瑛帆
石黒さんのお話をお聞きし、自分も忘れかけていた、自然に生かされているという事実を思い出させて頂きました。自分自身は山や川といった自然に囲まれた環境に生まれ、暮らしながらも、昔に比べると自然と触れ合う機会も減り、繋がりを意識することは少なくなっていたと思います。生きることは自然から恵みを貰うことであるという結びつきを意識できれば、ごみの分別やエコバッグの持参など、身近な環境配慮も行動の本質が変わってくるはずです。なんとなく大事だからではなく、自然と共に生きていくために必要な作業であると理解し、行動したいと感じました。環境に対して大きな行動をすぐに実行するのは難しいですが、身近なところから意識の捉えなおしをしていきたいです。
<組織概要>
団体名: | 認定NPO法人 自然環境復元協会 |
所在地: | 160-0014 東京都新宿区内藤町1-7 ホヲトクビル201 |
事業内容: |
自然環境の保全や復元に関する啓蒙・実践活動
|
URL: | https://narec.or.jp/ |