ローカルSDGs アクションフォーラム

参加団体の活動紹介

過労の教職員を支える居場所

NPO法人 教育の杜

団体紹介

痛感した職場環境の負担

2002年秋、私は過労によるうつ病を発症し、休職しました。不眠、不安感、抑うつ感に苛まされ、ときには、強い自殺念慮に襲われ、駅のプラットホームから線路に飛び込みそうになる衝動に駆られることが何度もありました。それを踏みとどまらせてくれたのが家族、そして友人です。そして、そのような状態になってしまうと他者との豊かなコミュニケーションができなくなってしまうことを実感しました。

当時から、教員が長時間労働などが原因でバーンアウト、ときには自死という痛ましい事実があることに目を向けるようになりました。折しも、精神疾患による病休者が激増を始めた頃でもあり、このままでは、近い将来教員のなり手不足、魅力の喪失という事態を招くことに危機感を持ち、教員がイキイキ、元気に働ける職場環境づくりのための活動を始めました。

たどり着いた課題

ウエルビーングな学校職場、職員室をつくるー。ウエルビーングな職員室で働くことができれば、何か困ったことがあっても安心して同僚に相談できます。また、気になる子どものことについてもいろいろと相談し合えます。それが、子どもたちの健やかな成長、豊かな学びを実現につながるのです。

子どもたちの前に立つ教職員がいつも上機嫌ならば、子どもたちも学校へ来るのが楽しくなります。それを実現するためにはウエルビーングな職員室をつくることが必要なのです。

NPO法人 教育の杜
HP https://kyouikukaikaku-2020.com/

該当SDGs 目標番号

インタビュー

NPO法人 教育の杜 理事長 藤川伸治さん

NPO法人 教育の杜 理事長 藤川伸治さん

1957年生まれ。2000年4月より広島県公立中学校理科教員、1995年4月~2000年3月末まで広島平和教育研究所事務局長、2000年4月~2018年3月まで日本教職員組合中央執行委員、2018年4月~2020年3月まで(公財)連合総合生活開発研究所主任研究員、2020年3月よりNPO法人共育の杜理事長。

「教職員がイキイキ、元気に働ける職場環境をつくるという夢」を実現するため日々、生活しています。小さな一歩、半歩でも挑戦し続けることが、流れを変えることになるという確信があります。

会見から変わった流れ

現在は、文部科学省が2023年度から始めた教員のメンタルヘルス対策の調査研究事業が成功するよう教育委員会やマスコミ関係者に事業趣旨、成果と課題を伝える取り組みを行っています。ウエルビーングな職員室をつくるには管理職の在り方が強く影響しています。まずは、管理職自身がウエルビーングであることがとても大切です。そこで、管理職を対象としてリーダーシップ・マネジメント・アセスメント・ファシリテーションの力をアップするオンライセミナー「みらい塾」の運営、コーチングを活用した「信頼を創る技術、育む技術」のセミナーなどを企画・運営しています。

会見から変わった流れ

教員同士が語り合える関係

「みらい塾」を卒業、引き続き学んでいる管理職は50名を超えました。成功したポイントは「みらい塾」に参加した管理職同士がつながり、信頼関係を深めながら、悩みや実践を語り合う関係が育まれてきたことです。管理職自身がエンパワメントされるとともに、自己成長をめざして学びを加速しています。このような管理職が増えることが、日本の教育を現場から変える原動力です。

課題は、「みらい塾」の存在を多くの管理職の方に知って頂きたいことです。取り組みの中で印象に残っている事として、創設当時は、共育の杜理事が運営を担っていましたが、現在は、「みらい塾生」が自立して運営をするように変わってきたことです。本来の学びとは、自らが主体となって学びの場を企画・運営することです。管理職による管理職のための自立的で持続可能な学びが実現されています。

日本の教員を守る展望

「みらい塾」卒業生が500人を超える時が、日本の教育が変わる時です。現在、第5期みらい塾生の募集中ですが、あと5年すれば500人を突破します。

文部科学省によるメンタルヘルス対策の調査研究事業を通じて、1700教育委員会のなかでどの教育委員会も成し遂げることができなかった精神疾患による病休者を計画的・組織的に減らす方策を確立し、全国に広げることです。

これらのミッション実現が、日本の学校教育の持続可能性を実現する鍵なのです。

メッセージ

社会を変えるのは、あなた自身です。一人の人間の力は微力であっても、無力ではありません。つながることで、一人一人の存在をリスペクトする社会に変えていきましょう。あなたの存在を必要としている人は、必ずそばにいます。あなたは、必要な存在です。

取材を終えて:公認サポーター 市川潤子

あなたの周囲で教員を辞めた方は、何名いますか。私のそれは2桁です。正確に言うと、11名です。だからこそ、こちらのNPO法人を立ち上げ当時から知っている為、ゴール3の「すべての人に健康と福祉を」の願いは心からこみ上げてきます。藤川さんの明るさは、苦労をご経験なさってきたからこそのものです。その一隅を照らす存在で、どうかこれからも全国の悩める教職員たちを支えて頂きたいです。

リアル対面だけではなく、オンラインでもご活動されているからこそ、過労の教職員たちが無理なく参加出来る良さがあります。これからも応援し続けたい団体です。
<組織概要>
団体名:NPO法人 教育の杜
所在地:〒160-0004 東京都新宿区四谷1丁目20番4号玉川ビル3階
設立:令和2年2月18日
事業内容: ・自己改変プログラムの普及事業
・公共施設での教育ボランティア事業
・研修会・読書会等のイベント事業
・インターネットメディア等の広報事業
・教職員の組織的なメンタルヘルス対策の構築
URL: https://kyouikukaikaku-2020.com/