群馬ヤクルト販売株式会社
*共助社会…「自助」、「互助」や「公助」だけでは解決できない社会課題に対して、社会的な助け合いの仕組みを持った地域社会
団体紹介
健康への情熱が原点
ヤクルトは、創始者である医学博士の代田稔さんが1921年に京都大学で「予防医学」を志し、微生物の研究の道に入りました。そこで乳酸菌が腸の中の悪い菌を抑える事を発見し、さらに強化培養する事に世界で初めて成功しました。1935年に代田保護菌研究所を設立し、ヤクルトの製造・販売を開始します。それが、今日「乳酸菌シロタ株」と呼ばれています。世界の人々の健康を守りたいという情熱と発想から、代田イズムとして「予防医学」「健腸長寿」「誰もが手に入れられる価格」の3点が、ヤクルトグループの全ての事業の原点としています。群馬ヤクルト販売株式会社(以下、群馬ヤクルト)は、1955年に県内4カ所(前橋・高崎・沼田・太田)で販売を開始しました。
保冷剤が熱中症の人を救助
群馬ヤクルトは6期(18年間)連続でヤクルトグループの全国総合最優秀販売会社賞を受賞しています。2035年までのビジョンである「共助社会の担い手になる」とのスローガンを掲げ、社内での「徹底した人材育成」を主軸とした活動に注力しています。育児・家事・介護と女性が仕事を続けていく上での悩みや課題を抽出し、会社が支える仕組み作りをしている点も、69年前からぶれていません。働く人を家族の様に大切にしているからこそ、本人たちが出会うお客さんに心にゆとりをもって接する事が出来ています。1983年に託児所を開設したスピード感も、全ての人々が社会で活躍出来るステージを作り出した証拠といえそうです。
HP https://www.gunma-yakult.co.jp/
該当SDGs 目標番号
インタビュー
代表取締役会長 本田博己さん
自治体と一緒に、地域住民の健康推進や地域づくりに関する活動を行っています。昨年2023年の群馬県内における協定締結自治体数は、25自治体、人口にして1,311,747名です。具体的な活動としては、「健康推進及び食育」「高齢者・障がい者及び子どもの支援」「スポーツ及び文化振興」「防災・災害対策及び防犯」「市町村政のPR及び観光振興」などです。
営利目的の企業と思われがちですが、我々は本業で社会の役に立つことを目指しています。警察との連携によりお客様の特殊詐欺被害を未然に防ぎ、消防・救急との連携によりヤクルトスタッフ(通称ヤクルトレディ)がお客様のお宅を訪問中にタコ足配線による火災現場を通報し延焼を防ぎました。独居の高齢者が転倒や脱水症状で、インターホン越しの反応がない、ポストの新聞紙が溜まっている状態等、常にめぐらせている危機管理のアンテナが現場では異常を感知しています。
また、県老人クラブ連合会との連携ではウォーキングを安全に楽しみ、交流を深めて健康づくりの輪を広げる為、協働で健康ウォーキング交流会を実施しています。最初に健康運動指導士の準備体操と、効果的な歩き方講座をきちんとしてからの運動をします。
県栄養士会との連携では「腸内フローラと健康」等様々なテーマで講演を行い、高崎健康福祉大学の教授にもご登壇頂いてます。
他にも下記4つのプロジェクトをご紹介します。
スクール連携プロジェクト
公立の学校の先生が1年間弊社へ研修に来ます(長期社会体験研修員)。人材開発部に籍を置き、異業種として民間企業の視点を学び教育現場に活かしてもらいます。この取り組みは全国103社あるヤクルト販売会社の中でも、群馬ヤクルト独自の活動です。既に8年目を迎えています。
また、主体的で責任ある行動をとる事が出来る生徒の育成を目指す高崎市立新町中学校では、地域社会との協働による開かれた教育活動の実践により、群馬ヤクルトとの連携で5つのプロジェクトを実施しました(キャリア教育・部活動支援・保健チーム健康教育・家庭科チーム健康教育・ひまわりプロジェクト)
ヤクルト子ども食堂プロジェクト
ヤクルトスタッフの拠点、サービスセンター併設の託児所スペースを利用して、毎月第4土曜日に開催し、年間419名123世帯のご家庭が参加しました。自治体や学生ボランティアが毎回協力してくださり、横への拡がりへリンクし、継続的な運営につながりました。季節に応じた食育やイベントを通じて、家族以外の人と同じ空間を共有できる場を作っています。更にはSDGsの取り組みの一環として、食品ロス削減のために富士見サービスセンターと食材循環の仕組みづくりに取り組んでいます。他にもヤクルトスタッフがお客様から頂いた農作物を、子ども食堂で活用しています。
認知症サポーター養成講座
お客様だけではなく、地域の見守り役として共助社会の担い手になる為、振り込め詐欺や地域包括支援センターの情報、孤立高齢者への接し方・対応方法なども盛り込んだ「認知症サポーター養成講座」を県内全サービスセンターで実施していますが、きっかけは、「いつも顔を合わせている地域の方々が認知症の疑いがある言動をされている事が増えてきた」と、ヤクルトスタッフたちの声があり「認知症対応を学びたい」という要望が多々出て来て実現しました。
地域の方々からは「最先端の詐欺を知りたければ、ヤクルトに聞け」と言われる程、様々な詐欺被害を未然にスタッフたちが防ぎ警察から感謝状が授与されました。また、耳が不自由なお客様にヤクルトを届ける事になったのをきっかけに、自主的に独学で手話を勉強したスタッフもいてその優しさに大変嬉しくなりました。
世界各地で活躍するヤクルトレディと健康経営の「働きやすい環境づくり」実現
人が健康である為には、人だけではなく水、土壌、大気など全ての地球環境、動植物も健康でなければならないと考え、ヤクルトグループでは「人も地球も健康に」をコーポレートスローガンに制定し、世界の39の国と地域で、ヤクルトレディが活躍しています。
群馬ヤクルトでは健康経営を推進中です。健康経営優良法人ブライト500に4年連続で認定、県内の事業所対象に健康経営普及活動を続けています。
また、人材育成の一環として当社独自の資格制度で、マイスター制度を創設しました。これは「人生100年時代に対応できるよう自分のスキルを更新し続けて欲しい」という願いから、自分自身が意義を感じられるような職務に自分らしさを発揮し、専門性を磨く事で周りに良い影響を与え認められる人材を見出しています。資格階級は3段階あり、「ブロンズ」「シルバー」「ゴールド」と合格するとマイスター認定されていきます。
伝達力、課題解決力、共感力、創造力、自己実現力等、職務の専門性に加えてこの5カテゴリーに対し、本人・上司・同僚・部下による360度サーベイを実施。自己認識と他者認識のギャップを確認し、成長を促します。
本田さんからメッセージ
自身の2つの信念として「人を育てるのが、最初で最後の仕事」「一人の経営者が全体を引っ張るのではなく、ビジョンが人を育てる」という考えを大切にしています。会社の将来像、ありたい姿、目指すべき方向性を定め、全員で共有する事が求心力・駆動力になります。一生成長、一生実践ですね。
だからこそ、私たち群馬ヤクルトが大切にしている5つの価値観(1利他の心 2お客様本位 3価値普及 4生産性の向上 5革新の精神)をこれからも誠実に実践しますので、共助社会の担い手として地域社会のお役にたてれば幸いです。
取材を終えて:公認サポーター 市川潤子
世界中で様々なSDGsの取り組みが行われていますが、ここまで地域づくりネットワークに注力している姿勢に感服しました。利他の心の本質を、取材では深く教えられたと感じます。群馬ヤクルトを取材して、ゴール3の「すべての人に健康と福祉を」やゴール11の「住み続けられるまちづくりを」についてアプローチをし続けている組織だという印象が刻まれました。本田会長が地域連携を大切にしているだけではなく、社員一人一人が地域づくりネットワークを大切にしながら真心を届けているのですね。今後も応援したい取り組みでした。