スポーツアカデミーを設立してから、5000人近い子どもたちが会員として参加してくれましたが、そのなかでも大切にしているのは「人の循環」です。クラブですごしていた子ども達は、大学を卒業するとそれぞれの道へ進みますが、戻ってきてくれることも多いのです。「コーチとして帰ってきてくれた」とか「子ども食堂を手伝ってくれている」とか。その瞬間が一番嬉しいですね。

若いコーチたちが自分たちの経験を次の世代に伝え、コミュニティがさらに広がっていく。この循環が、クラブの成長と100年構想の実現につながるのだと感じています。

スポーツアカデミーでは、「誰ひとり取り残さない地域作り」を目指しています。スポーツに打ち込んできた子どもが怪我をした場合、突然その道を絶たれることで無気力になり、悪い道へ進む危険性もあります。スポーツだけに依存せず学力を身に付けておけば、たとえ怪我をしても自分自身の未来を切り開く力が育まれるでしょう。

「子どもたちが安心できる居場所でありたい」との想いも込めて、学習支援もおこなっています。中学生は受験に向けて学習に取り組み、不登校の子もここへ来て勉強しています。

スポーツアカデミーは地域コミュニティをビジョンに活動していましたが、コロナウイルスの拡大により、それを全面的に否定された状況になりました。コロナ禍で地域コミュニティの活動が制限されるなか、スポーツアカデミーは「誰ひとり取り残さない地域づくり」をテーマに、新たな取り組みを開始。

仕事を失い食べることに困る家庭が増えたことを知り、施設内で子ども食堂やカフェをスタートしました。保護者の協力のもと、地域の絆を守り続けられるよう活動しています。

スポーツアカデミーは、100年続くクラブを目指すうえで、地域のみんなが気軽に集まり交流できる「居場所」を提供したいと考えています。5年前、クラブ経営について学んでいた際にドイツを訪れ、地域の人々が自然と集まりスポーツを通じて絆を深める姿に感銘を受けました。ドイツのクラブはまさに地域の一部となっており、日本とは全く違う雰囲気でした。特に印象的だったのは、地域の方々が立ち寄ってお酒を飲み、試合を観戦しながら応援する姿です。

日本ではお酒を販売しているお店に行くイメージがありますが、ドイツではクラブハウスに皆がお酒を持ち寄り、共に過ごしていました。

スポーツアカデミーもゆくゆくは社会人チームを作り、午前中はファミリーでウォーキングやジョギングをし、午後は自分のチームの試合観戦、夜はクラブハウスで交流できたら。スポーツアカデミー100年構想のなかで、こうしたドイツのような時期がくればいいな、そういう希望をもっています。

どんなに辛い時でも、あなたは一人ではありません。周りには必ずあなたを見守り、助けてくれる人がいます。皆が安心して集まり支え合える居場所を、共に作っていきましょう。

夏休み中にクラブへ遊びに来ていた子どもたちの声もうかがいましたが、子どもたちの笑顔からも、スポーツアカデミーが安心できる居場所であることが伝わりました。「誰ひとり取り残さない地域づくり」を目指し地域の一部として根付く姿が伝わり、スポーツアカデミー100年構想への期待が高まりました。