一般社団法人DFC Japan
団体紹介
一般社団法人DFC Japanは、未来を担う子どもたちが身近な問題に気づき、自ら解決策をデザインし実践するプロジェクト学習「Design for Change(DFC)」を通じて、次世代のエンパワメントを推進している団体です。この活動は2012年から日本で展開され、未来のリーダーとして成長するための基盤を提供しています。2025年にはDFC世界大会が日本で開催される予定であり、大会に向けて子どもたちが世界とつながる機会を広げる準備を進めています。
HP https://dfcjapan.org/
該当SDGs 目標番号
インタビュー
一般社団法人DFC Japan 代表理事 大葉ナナコさん
日本の学校教育と子どもたち
DFC Japan代表理事の大葉ナナコさんは1997年より20年にわたり、次世代育成の公益的事業に従事。地域課題の改善策を行政と構築する日々の中で、行動変容には「実感」と「当事者意識」が不可欠であると感じていました。日本の公教育・学校教育は歴史も長く素晴らしいのですが、150年前の構造が依然として残り、子どもたち自らがプロジェクトをデザインする機会は今もほぼ無いのが実情です。探求の授業だとしても、いわゆる「調べ学習」が主流であり、インターネットで他者の書いた記事を調べ、自分なりの解決案をまとめる作業がアクションと見なされています。課題を発見しても、自ら解決策をデザインして実行してみる機会が、残念ながら学校教育にはありません。先生の指導やカリキュラム通りの行動をしても自信は育まれません。
日本の子どもたちは素晴らしい人柄を持っています。一方で「でも・どうせ・だって・できない」といった言葉に現れる自信の無さや行動力に欠ける点があり、この背景には身近に接している大人に責任があると感じています。
これらの経験から、子どもたちが自分自身の着想を信じ、周囲への行動変容を促す能力を高めることが重要であると感じ『Design for Change』を日本で広めることを決意しました。
Design for Change
「Design for Change」は世界70カ国以上で広がる、子ども自身がチェンジを起こすプロジェクトデザイン学習です。共感力や創造力を引き出すフレームワークで構成されており、子どもたちは課題解決のために変化を起こすプロジェクトのデザインと実践を通して「I canマインドセット(=自己効力感)」が育まれるのが特長です。
私たちはSDGsの課題に取り組む学校・地域・保護者・教員の皆さんとの出会いの中でDFCのトライアルを重ねています。具体的な例をご紹介すると、小学6年生の女子は古着の課題に対する予防啓発活動を行い、インドの世界大会でその成果を発表しました。中学校2年生は身近な節電行動や環境保全、プラスチックゴミ問題に取り組むプロジェクトを実践。高校生になると活動の延長線上に行政機関と対話を置き、積極的に活動しています。これらのプロジェクトを通じて、子どもたちは単に知識を得るだけでなく、実際に社会を変える行動を起こすことを学んでいます。
子どもたちだけではなくDFCを実践した先生方にも変化が起き、プロジェクトデザイン学習が進化したことも嬉しい驚きでした。最初はDFCに前向きではなかった先生も表情がどんどん明るくなり、毎回学校訪問するたびに「生徒からこんなアイデアが出てきました!」と先生自身が生き生きと活力に満ちていったことがとても印象に残っています。
さらに今年からはDFCパートナー校制度を導入。東京家政学院中学高等学校とともに難民支援理解のための啓発ガイドブック作成、不登校予防のプロジェクト、校内プラスチックゴミ軽減プロジェクトなどが進行中です。また現在、公立中学高校での起業教育にも力点を置き始めた和歌山県の複数の市区町村と協議中で、次世代とともにウェルビーイングな地域づくりを目指し、第一次産業の持続可能性を高める取り組みの検討を開始しています。千葉県鴨川市の鴨川自然王国でも異学年交流型のプロジェクトが進行中です。実践的なSDGsプロジェクト学習が活発な学校はもちろん、ウェルビーイングな地域づくり、起業教育に熱心な地域など持続可能性を高める動きが活発な地域の次世代にDFCを届け、パートナーシップを続ける予定です。
2023年インドでの世界大会で日本から駆けつけてプロジェクト発表をした小学6年生
SDGs活動で築きたい未来
私たちは子どもたちが社会課題に向き合い解決策をデザインし実践することで、持続可能な未来を築くことを目指しています。具体的には 「1.生物多様性保護や地球環境保全と自然の利活用」「2.健康教育とウェルビーイング向上策」「3.世界73ヵ国で連携し平和な未来創りのためのパートナーシップ育成」が目標です。
そのためには私立校の生徒だけでなく、公立校の生徒にもチェンジメーカー体験を贈ることが重要だと考えています。DFC 認定ファシリテーター研修を開始したので、各地域の公立校や私立校で持続可能型にDFC が展開され続けるモデル作りに挑戦したいと計画しています。公立校は地域により条件が違うため、学校ごとの状況に合わせた提案や地方との縁を広げていくことも必要です。
今後の展望としては2025年11月末のDFC 世界大会日本開催の際に、DFCを実践した子どもたちのコミュニティプラットフォームを構築して、より持続可能な形で国際協働プロジェクトともコラボレーションできるよう準備をしています。
学校職員への研修会ではSDGs推進のプロジェクト学習を解説
SDGs× DFC
女子美術大学附属高校イラストレーション部の高校生たちとエコプロジェクト
大場さんからメッセージ
これまで数多くの世界の子どもたちのプロジェクトデザイン教育を見る機会に恵まれました。
世界から日本を観察すると、持続可能性と創造性や協働力、改善する能力はとても高い国だと感じます。古来から自然災害とともに共存してきた自然に優しい暮らし方で、里山文化など世界に誇る在り方や暮らし方がたくさんあります。諸行無常であるという暗黙知も共通してあり、常に私たち日本人は状況に合わせて創意工夫し、小さな変化を重ねて続けてきた、誰もがチェンジメーカーなのかもしれません。
世界で起きる戦争や疫病パンデミックなど絶望感が重なる出来事にあふれる現代社会ですが、子どもたちが夢にあふれ、幸せに暮らすコミュニティを増やさなければなりません。
「Design for Change」は非暴力でインドを独立国に導いたマハトマ・ガンジーの言葉「Be the Change You Wish to See in the World(あなたが見たい世界の変化に、あなた自身がなりなさい)」から名付けられた国際プロジェクトです。日本の次世代が世界の次世代ともっともっと深くつながり、ともに世界をデザインしていきながらそれぞれの国の社会デザインも改善を重ねたら、必ず美しい未来をつくれると信じています。
子どもたちがチェンジメーカーとなる輪が広まりますように、ぜひ多くの方々に応援いただきたいと存じます。
★ クラウドファウンディング実施中|10月9日まで
学校の先生向けのDFC進行マニュアルの翻訳出版など「Design for Change」を日本に広めていくためのご支援をよろしくお願いいたします!
取材を終えて:編集委員 伯川杏実
「自己肯定感」という言葉は広く浸透していますが、「自己効力感」はまだ馴染みが薄いように感じています。 もし子供の頃に「I canマインドセット」に触れる機会があったなら、私の人生も大きく変わっていたかもしれません。 子供たちが 私にはできる!という大きな翼を広げて世界中で羽ばたく未来を想像すると、心が弾みます。 DFCJapanの活動を多くの皆さまに知っていただきたいと思います。