NPO法人東京キャットガーディアン
団体紹介
需要生み、殺処分をゼロに
行政による犬猫の殺処分数は年々、減少傾向にありますが、未だゼロではありません。更に、数値として現れる他にもブリーダーやペットショップなど、見えないところで亡くなる命も数多くあるといいます。NPO法人東京キャットガーディアンでは、猫の保護・譲渡だけではなく保護猫カフェや猫付きマンション®・猫付きシェアハウス®の運営も行い、新たな猫の需要を生み出しています。また特定の猫を支援できるフォスターペアレント制度、1日ボランティアなど、活動に参加したい方の気持ちに応える多様な支援制度も整えています。
HP https://tokyocatguardian.org/
該当SDGs 目標番号
インタビュー
NPO法人東京キャットガーディアン 山本葉子さん
あてのない憤りの原体験
私が小学生の頃は団地住まいで動物を飼えなかったのですが、外で面倒を見ていた親子犬がいました。その犬が、ある日突然、目の前で連れて行かれてしまったのです。当時は狂犬病や犬の増殖防止のため、野犬を捕獲し殺処分する野犬狩りという動きがありました。親子犬も例に漏れず対象となり、子供だった私にはどうすることもできなかったのです。幼いながらに当たり所のないやるせなさを強く覚えた記憶があります。
大人になり、母親がパーキンソン病を患い団地暮らしができなくなりました。看病のために戸建て物件を購入したのですが、間もなく母親を介護施設に預けることになったため、一軒家の一人暮らしとなったのです。そんな折に、大塚(東京都)にあるおにぎり屋さんが保護していた全盲の猫を引き受けました。その後は次々と保護された猫や犬、アライグマやタヌキなどを自宅で、個人で飼うことになったのです。いつしか30頭ほどの動物の面倒をみている状態となり、シェルターメディスンという海外の文献を参考にしながら譲渡について考え始めました。次第に活動の仲間も増え、2008年4月に保護団体として踏み切り、同年12月に現在の地に開放型シェルターを設立しています。
賑やかなHPの背景には
東京キャットガーディアンのホームページはとても賑やかなトップ画面になっています。そのくらい数多くの取り組みを行っているのですが、やりすぎは自覚しています。しかし、どれも必要な活動なのです。個別に番号を発行し問い合わせることで迷子を見つけやすくするしっぽコール、飼い主のもしもに備え、万が一の場合に飼い猫を引き受け譲渡先を探すねこのゆめ、ペット可物件・猫付きマンション®・猫付きシェアハウス®を探せるしっぽ不動産、その他猫に関する活動をする人を支援する支援者支援もしています。
様々な活動をしている私たちですが、発足当初からとにかく沢山の猫を救うことを第一のミッションにしています。実際に猫の保護・譲渡は精力的に行っているのですが、その中でもなるべく猫にとって負担の少ない状態での譲渡を心掛けています。具体的には保護猫カフェを運営し、譲渡を希望する方に来てもらう、幸せの黄色い車という移動譲渡会場車で譲渡会を開催するなどです。猫は環境の変化に非常に弱いため、最大限配慮しつつ、貴重な譲渡の機会を失わないように努めています。不幸な動物を生まないために、人間の伴侶動物は人間が管理できる状態にしなくてはなりません。野良の牛や羊がいないように、猫にも必ず飼い主がいる状態を目指しています。
猫の生命力とほっとけない精神
先日、一人の女性から顔が半分ない猫を保護したと連絡を頂きました。ひとまず病院に駆け込んでくださったようですが、飼い主ではないとの理由で診察を断られ、それでもどうにかしたいと東京キャットガーディアンに相談が来たのです。私の方から遠方になるけれども、と外科に強い先生をご紹介したところ、ご自身の都合を後回しに病院へ車を走らせてくださいました。その後、猫は一命を取り留めこちらで預かっていますが、重傷を負いながらも食事を一生懸命頬張る姿に生きようとする力を感じています。
テレビのニュースなどではセンセーショナルな話題が取り上げられがちで、多頭崩壊など悲惨な現状を伝えるものが目立ちます。しかし、実は温かい話も多く、保護した猫に対し諦めず手を差し伸べてくれる方がいるケースは特殊な事例ではありません。活動の中で、力及ばず亡くなってしまう猫も残念ながらいます。辛いと感じる体験も多いですが、人情が溢れる経験を胸に、日々目の前の救える命に向き合っています。
山本さんからのメッセージ
とりあえず、やってみてください
東京キャットガーディアンには個人、法人を問わず、猫のために何かをしたいと声をかけてくださる方が沢山います。実際できる支援はいくつもあるのですが、生真面目なのか、どれに一番取り組むべきかと悩む方が多いようです。私たちは、動画を見るだけで活動を支援できるShippoTVや1日だけボランティアができるネコ活ぷち、保護猫とふれ合えるカフェにお買い物で支援ができるShippoTV通販部などを運営しています。まずは気負わず、興味をもった活動に手を出してみて欲しいです。いくつかの支援を経験する中で、やりやすいものにシフトしてくれたらなと思います。
どこを支援したらいいかについては、受け入れ数、譲渡数、死亡数など可視化されている数値を見て、実績を上げているところを見極めて欲しいです。どうしても知名度や活動歴の長さに目線が行きがちですが、必ずしも実績と比例するとは限りません。規模が小さくても、保護と譲渡の数が多い団体もあります。救える命が増えるよう、実績があり、将来性のある活動を支援し、保護団体を育てて欲しいと思います。
ShippoTV(Youtube) https://www.youtube.com/user/ShippoTV/
取材を終えて:編集委員 坂本瑛帆
私自身、猫と共に暮らしており、知っていると思っていた事柄が、山本さんのお話をうかがう中で覆ることが多く、勉強させていただきました。特にマイクロチップを入れているから迷子になっても大丈夫と思っていたのですが、データベースが一本化されていないために問い合わせ先を間違えると探せない、GPSではないため猫自身の居場所が分かる訳ではないなど様々な問題点に気づかされました。飼われている猫にも未だ解決すべき問題はあり、猫の幸せのため、もしもに正しく備える必要性を感じています。また、自分にできる支援についても、東京キャットガーディアンを通じてトライしてみたいと思いました。