Borderless Tanzania Limited
団体紹介
Luna sanitary productsは全ての命が祝福され、志ある学生が夢を追い続けられる社会を実現するために活動している。タンザニアには10代で妊娠してしまう女の子が、一部の地域を除いて約30%、タンザニア全土で約7万人いるとの報告があり、2020年に妊娠により退学した生徒数は5500人以上という。Borderless Tanzania Limited は、この現状に打ち勝つため、若年シングルマザーにリーチするプロジェクトを展開している。各地に設立される小規模な生理用ナプキン製造工場により、雇用を創出し、同じ境遇の仲間と共に支え合うコミュニティを目指している。最近は、活動が認められUNFPA(国連人口基金)と連携するプロジェクトも実施。地域の人々と協力して、若い母親たちが夢を追い続けられる社会を実現するために努力している。
HP https://www.borderless-japan.com/social-business/luna-sanitarypads/
該当SDGs 目標番号
インタビュー
Borderless Tanzania Limited 代表取締役社長 菊池モアナさん
国際協力に携わるきっかけ
私は、中学校時代から平和学習に興味を持ち、大学では国際協力を学ぶための大学を選択しました。特に開発教育学の授業で教育が争いを和らげる手段であることを学び共感し、なぜたくさんの文献や発展がある中で「アフリカの子どもたちはいまだに学校にいけない子がいるのだろう?」とアフリカの子どもたちの教育格差に疑問を持ちました。そのため、大学3年生の時に休学し、タンザニアにわたりました。現地で子どもたちと共に生活し、問題の現状を目の当たりにしました。この経験から、何か行動を起こしたいという意欲が湧き起こりました。
少女との出会いで知った現状
タンザニアでの調査で、妊娠した少女たちが退学する背景を文化人類学的な視点から調査しました。16歳の少女は知人からのレイプにより妊娠をしました。そのためお医者さんになる夢を諦めざるを得なくなりました。なぜならタンザニアでは10代の女の子が妊娠する事例が7万人以上あることが分かり、妊娠すると強制的に退学させられ、公立学校への復学が禁止される法律があります。さらに中絶が禁止され、妊娠させた男性は重い刑罰(懲役30年)を受けるため、男性は逃げてしまうのです。この現状に対して、調査を行った者は無力感を感じましたが、大学生のため資金や食料支援しかできませんでした。少女の人生を変えられないことが悔しかったのですが、その思いと共に日本に帰国します。
妊娠がLuna Sanitaryの活動へ
私が、日本に帰国後、私自身の妊娠が発覚しました。両親や友達から反対されましたが、自分の心と向き合って産むことをきめました。子どもを産んでからは周りの人たちが応援してくれて、大学にも通い続けることができ、授業と授乳の繰り返しの生活をしていました。その時に日本に生まれて本当に良かったなと思えることがたくさんありました。助けてくれる人が周りにいて、扶養手当や児童手当があってなんとかやっていくことができました。
でも、出会った女の子の状況は全く違うものでした。お父さんは亡くなって、お母さんは再婚して家を出ていき、おばあちゃんと2人で暮らしをしていたのですが。妊娠してからはおばあちゃんにも追い出されて、相手の家族からも拒絶されて、自殺をしようとしてしまったのです。同じ妊娠を経験していても国が違うだけでこんなにも状況が変わるのかと愕然としました。産まれてくる命は国や地域関係なく歓迎されるべきだと思います。自分が助けられた分、今度は彼女たちの力になりたいと思って活動し始めました。
貧困が引き起こす少女たちへの問題
貧困層の家庭では、娘を学校に通わせるために必要な制服代や筆記用具代を支払えないことがあります。その場合、遠い親戚の家などに出稼ぎに行かせるしかなくなってしまうのです。生活費から学校のコストまで全てを賄ってもらう代わりに、女の子は家のお手伝いをすることになりますが、それをいいことにその家の男性から体の関係を求められることもありますが、親に変なことを言われてしまうのではないか、学校に通えなくなってしまうという恐怖から断ることができなくなってしまいます。貧困地域の学校までの距離が遠いため、毎回3、4時間かけて通うことになります、帰り道には無料で乗せてくれる人もいますが、最後にお礼を求められることもあります。お金もなくて断りにくい状況になっていて、このような状況が事態を悪化させてしまっています。
必要な日用雑貨は何か?
私たちがソーシャルビジネスを始める際には、通常、ビジネスモデルを構築してから、それがどのように社会的課題に対応するかを考えるのが一般的な手順だと思います。しかし、私たちの場合は、最初にその社会的課題を解決するロジックを考え、それに適合するビジネスモデルを探しました。私が解決しようとしている社会的問題は、全国的に約30%から40%の女性が10代で妊娠している現状です。そのため、1か所で職を作っても他の地域には届かないため、意味がないと感じました。全国各地で必要とされるサービスや商品は何かを考え、その中でナプキンのアイデアが浮かびました。私が大学生の時に調査を行った際、ナプキンの質が低かったことを覚えており、この分野があまり注目されていない可能性があると考え、調査を始めました。
ナプキンを作る最初の壁と奇跡的な発見
私たちがナプキンを作ると決めた時の一番の課題は、ナプキンを実際に作ることができるかどうかでした。日本で必要な機械を購入するには膨大な費用がかかるため、難しいと感じました。さらに、機械を開発することも調査したところ、膨大な費用がかかることがわかりました。そこで、もう作れないかなと断念しかけた時に、友人から「パットマン」という映画を紹介されました。その映画では、インドの男性が奥さんのためにナプキンを開発するストーリーが描かれており、大変参考になりました。自分たちでもできるかもしれないと考えることができました。その後、映画に登場するインドの会社を検索し、現在使用している機械を作っている会社を見つけることができました。これでナプキン製造に取り組むことが決まりました。
創っていきたい未来のカタチ
私が理想とする未来は、全ての命が祝福されて、若者が夢を追い続けられる社会が実現することです。私自身の経験を通して、多くの反対をされた命ってすごく悲しいと思っています。10代で妊娠することは、残念ながらおめでとうと言ってもらえる子はほぼいないのではないかと思います。その子たちは被害者でしかないのですが、なんでその子たちに対しておめでとうって言えない社会なのだろうという想いがありました。とても悲しい事だと思います。妊娠をしても、また学校に通い直せたり、しっかりとした仕事につける社会環境が整えば、誰も被害者である女の子を責めたりしないのではないかと思っています。もちろん妊娠して大変だけど、一旦はおめでとうってみんなが言えるような社会を作りたいと思っています。
今後の課題
私たちが現在直面している課題は、タンザニア全体でナプキンを使用している人は半分程度であり、田舎の人々の多くは布を使用していることです。ナプキンの販売数を増やすことが苦戦しています。布を使用している人々にナプキンを販売するのは難しく、全くナプキンを知らない人や、ナプキンで肌荒れがあったことがある人々にとって特に難しいです。販売数を増やしていくことは可能ですが、それには時間がかかるという課題があります。
モアナさんから読者の皆さまへのメッセージ
シングルマザーが安心できる環境を
私自身も学生時代に妊娠し、出産し、シングルマザーとして子育てと学業、仕事の両立の大変さを経験しました。日本という守られた国で支えてくれる人々がいたおかげで、無事に大学を卒業することができました。その経験から、タンザニアで若年シングルマザーとして生きる女性たちの厳しい現実を知り、自身の恵まれた環境との対比を考えると、彼女たちを応援したいと強く思いました。彼女たちが安心して暮らし、夢を追い続けられる環境を整えるために活動しています。職を生み出すだけでなく、性教育を提供することで次なる若年妊娠を防ぐことも目指しています。
ぜひ、温かな支援を
直面している課題の中で、時間がかかる中での資金調達が難しい部分です。最近は、マンスリーサポーターという毎月1000円から始められるシステムを導入しました。支援者は好きな金額を選び、活動費やナプキンの寄付活動に割り当てることができます。また、企業とのコラボレーションやCSR研修活動も行っています。女性の貧困問題などについて知っていただき、「自分たちの会社ではできるだろう」をベースにアイデアを出していく研修をしています。しかし、現実的に車のメンテナンスコストも負担が大きく、山道への寄付活動に支障をきたしています。実際に山の奥に住んでいる少女たちに支援に行けなくなってしまっています。
車のメンテナンス費用のサポートも支援の視野に入れていただけると嬉しいです。
マンスリーサポートURL
https://luna-sanitaryproducts.com/products/supporter
取材を終えて:編集委員 澤彩夏
モアナさんは明るく、強い意志と想いを持っている方です。彼女と話すことで、私も彼女からポジティブなエネルギーを受け取ることができました。彼女の優しさと力強さから、妊娠や退学といった困難に直面した女性たちを救いたいという想いが形になったことを感じました。モアナさんの人柄と思いが人々を動かしてきたのだと思います。実際、私もその一人となりました。貧困という現実を受け止め、自分にできることを真剣に考えています。彼女が成し遂げていることに心から敬意を抱いています。