ローカルSDGs アクションフォーラム

参加団体の活動紹介

認定NPO法人ピッコラーレ
妊娠に関する葛藤や困難を抱える女性の支えとして

取材協力

認定NPO法人ピッコラーレ

認定NPO法人ピッコラーレ

〒171-0021
東京都豊島区西池袋5-10-24
深野ビル 2F

発足

2015年

事業内容

・妊娠葛藤相談
・居場所づくり
・研修・啓発
・調査・政策提言

URL

https://piccolare.org/

今回、取材にご対応いただいたのは
認定NPO法人ピッコラーレ 代表理事 中島かおり様
認定NPO法人ピッコラーレ 代表理事 中島かおり様

ピッコラーレさんのSDGs 活動内容

「にんしん」をきっかけに、だれもが孤立することなく、
自由に幸せに生きることができる社会の実現

妊娠葛藤相談窓口からスタート
ピッコラーレの前身団体「にんしんSOS 東京」は、東京に妊娠葛藤相談窓口が必要だとの思いを持つ、助産師6 名、社会福祉士1 名が集まり、任意団体として2015 年9月に発足しました。2018年11月にはNPO 法人ピッコラーレを設立。当事者のニーズにさらに応えるための取り組みにも挑戦しています。妊娠に関する葛藤や困難を抱える女性たちの支えになりたいと活動し9 年目に入り、これまで10,000 人を超える人々を支援する存在となっています。妊娠葛藤相談は、医療的支援だけでは十分ではない、福祉的支援だけでも足りないため、多様な視点が必要と考え多様な職種のスタッフが、それぞれの専門性を活かして、立体的に、多面的に、当事者の選択を大切にしながら活動をされています。

妊娠・出産に関する日本の社会問題解決に取り組む
ピッコラーレさんが取り組む問題は、日本における虐待死の問題や、出生直後の死亡率の高さ、出産や妊娠中に医療機関を訪れることができない女性たちが病院外で孤立出産を経験しているという現実です。2021 年度にはこどもの虐待死の48.0%が0 歳児。そして生まれたその日に亡くなったこどもは6 人、そのほとんどは遺棄という深刻な状況です。

相談窓口では、妊娠前の相談も多く、社会資本の不均衡や不平等を指摘し、妊娠や出産に関す制度改善を訴えたところ、ピッコラーレさんのぴさら(若年妊婦のための居場所)のような取り組みがモデルとなり、令和6年から改正児童福祉法の中で法的な根拠を持つ居場所として妊産婦等生活援助事業が新しく制度化されました。また、ピッコラーレさんの活動は広く表彰され、社会デザイン大賞の社会デザイン大賞やとしまイノベーションプランコンテストの審査委員会奨励賞でその功績が称賛されています。

主な取り組み


出典:ピッコラーレHP

中島さんへのインタビュー

「驚くべき現実に直面して」-ピッコラーレを始めたきっかけ

虐待死のケースで特に多い「0日死」が日本で依然として減らない現実を知り、たったひとりきりで妊娠を抱えている方を孤立させないため何らかの方法で繋がる必要性を感じました。また、熊本にある慈恵病院の「こうのとりのゆりかご」に寄せられる相談の30%以上が首都圏からだということを知り、どこに住んでいたとしても相談できる場所が必要だと考え、2015年に理想を共にする7人で組織を立ち上げることを決断しました。 妊娠葛藤相談窓口「にんしんSOS東京」に寄せられる相談の声を聞く中で、ジェンダー、年齢関係なく、生理が遅れている、避妊に失敗をしたといった、妊娠がわかる前の段階から悩みを抱える人々がいることに気づきました。

また、思いがけない妊娠だったとしても、仕事を持っているか、お金があるか、パートナーがいるか、頼れる誰かの存在があるかないかといったその人自身が持つ社会資本の質や量によって、妊娠が生きるか死ぬかの困難になってしまう人とそうでない人がいる不平等さを強く感じました。

医療であるにもかかわらず、避妊などの保険適用がされない現実や、自己責任のメッセージ性に疑問を抱きました。社会システムの複雑な困難に目を向け、性と生殖に関する健康と権利(SRHR)が日本で不十分に扱われていることにも気づきました。これまでの活動を通じて、孤立出産をなくすためには、SRHRを推進し積極的な一歩を踏み出すことが不可欠だと確信しています。

*SRHR=SRHR(Sexual and Reproductive Health and Rights)は、「性と生殖に関する健康と権利」を意味します。これは、個人が自らの性と生殖に関する決定を行い、それらに関する情報にアクセスし、サービスを受ける権利を指します。具体的には、避妊、妊娠、出産、性感染症の予防・治療、性教育、性的暴力の防止などが含まれます。SRHRは、個人の尊厳と自己決定権を尊重し、健康や福祉を促進することを目指しています。

「自分自身の選択を尊重できる社会に」-ピッコラーレが叶えたいこと

この妊娠をどうするか、自分で決めていくためには、まず「NO」と言っていいという安心で安全な環境が必要です。自分の意思を表明しても否定されない、自分の選択を自己責任とされないこと、後で違ったと思ってもやり直せることも大切で、その選択を一緒に支えてくれる存在も必要です。妊娠中に安心でいる居場所がない方のための、「ぴさら」では、スタッフたちは生活の些細なことでも「あなたはどうしたい?」と利用者さんに問いかけるようにしています。「ぴさら」で使うシャンプーや今日飲むお茶も本人が選ぶことができるよう、スタッフたちは彼女たちがこの場所を「HOME」と思えるよう日々サポートをしてくれています。一つ自分で決めていくための選択肢を用意し、決定までの時間を保証することは、彼女たちが持つ生きる力を信じることでもあります。ある卒業生は「みんながいつも「どうしたい?」って聞いてくれたよね。最近は自分で自分に『どうしたい?』って聞けるようになったよ」と言ってくれました。

その妊娠がたとえ困難なものであったとしても、「にんしん」が誰かと繋がるきっかけとなってほしい。そのきっかけによって、それまで抱えてきた困難の一つ一つを整理し、いくつかを手放すことができるなら、自由に幸せに生きていくことができるのではないか。そのためにはその妊娠をどうするか、自分自身で決めることができる社会システムが必要だと私たちは考えています。

相談内容と支援の事例


出典:ピッコラーレHP

「孤立分娩を減らすカギ」
SRHR(性と生殖の健康と権利)について思うこと

私たちは2020年にこれまでの相談をまとめた「妊娠葛藤白書」を出版しました。相談の声をデータとしてまとめる中で浮かび上がってきたのは、孤立出産を生み出す背景にはさまざまな要因があるということです。そして、その多くは個人に由来する要因よりも私たちの社会に組み込まれている要因によるものが多く、自分の体のことであるにも関わらず妊娠について「自己決定できない」というものでした。自己決定を妨げている要因の中に、「包括的性教育の不足」があります。
被害者はもちろんのこと、知らずに加害者になっていたという人、孤立出産を減らす鍵に
性教育や自己決定権の重要性を広め、包括的性教育やSRHR(性と生殖の健康と権利)の考えを一般向けに広げていきたいと思っています。そうすることで孤立分娩をなくす活動にも直接つながっていけるからです。なぜならSRHRは、個人が自らの選択に基づいて人生を決める権利を尊重することです。

日本では、性と生殖に関する問題はよく「自己責任」と見なされ、社会的な支援が不足しています。医療保険の適用外であることや法的制約により、特に貧困層や社会的弱者にとってアクセスが難しい状況があります。中絶や避妊などの医療処置はヘルスケアであり、身体的・精神的負担を最小限に抑えることが重要です。個々の信念や経験に基づき、異なる意見を尊重することが必要ですが、日本社会では倫理観やイデオロギーに縛られ、個人の権利が制約されています。SRHRへのアクセスは平等であり、個人の人権が社会的規範よりも優先されるために私たち一人一人がSRHRを知る必要があります。

「ほっとできる潮溜まりでありたい」-ロゴに込めた想い

ピコ(ハワイ語)=中心、コッコラーレ(イタリア語)=寄り添うという意味が込められています。にんしんにまつわる全ての「困った」「どうしよう」に寄り添うことをミッションとする団体の想いを名前に込めました。潮だまりのような、大きな海の大海原を避けて海水が暖かくてたくさんの生き物集まり、たくさんの関わりを持ってまた大海原に旅立っていく、そんなちょっとした休憩所という想いを絵本作家の相野谷由起さんにイラストを描いていただきました。誰にも頼れず、たった一人で海を漂流している人たちがたどり着き、少しでもほっとできる潮溜まりでありたいという思いを込めています。

<ピッコラーレロゴ>

出典:ピッコラーレHP

中島さんからみなさまへ

「自分の持つ力を信じて」-寄付で応援してくださる皆さまへ

独りぼっちで取り残されている方にとって皆さんの存在は社会への信頼につながります。自分の持つ力を信じ、応援してくれる人がどこかにいる、「ここにいていいんだ、生きていていいんだ」「にんしんをきっかけに、誰もが孤立することなく、自由に幸せに生きていくことができる社会を」。そんな風に思える未来を一緒に作りましょう。

取材を終えて

ピッコラーレさんは利用者さんをひとり、ひとり意志をもって独立できるように選択という課題や成長を愛をもって促し、実家という安心できる場を提供していました。いろんな背景、思いを持つ女性たちがこの潮だまりにたどり着き暖かい場所で安心して過ごせる救いの場所なのだなとピサラに流れる暖かさを感じました。